そもそも、貧困は世界の大きな課題であり、日本の問題だけではない。日本や欧米先進国の貧困は、等価可処分所得が中央値の半分に満たない状態を示す「相対的貧困」であり、日常の飲食にも事欠く「絶対的貧困」とは異なる。世界では、この絶対的貧困に陥っている人口が存在し、現在でも「7億人」近くが1日「2.15ドル(約340円)」で暮らしている。
さらに世界の総人口の約44%に当たる「約35億人」が、1日あたり「6.85ドル(約1080円)」を基準に貧困と戦っているといわれている。通常の経済成長だけでは、人類の大部分が貧困にあえぐままと言っていいだろう(ARAB NEWS「貧困―世界最後の大きな課題」2024年11月28日)。
問題は「貧困」であり、貧困は連鎖して拡大する?
一方、貧困問題はしばしば格差問題として報道されることが多い。日本でも格差社会が進んでいると報道されているが、内閣府が2024年に実施した「国民生活に関する世論調査」によると、「中流」と自認する国民の割合が「89%」にも達している。上流(1.7%)や下流(8.7%)を大きく上回っている。いまだに、日本人の多くは自分を「中流」だと自負しているところに、氷河期世代の抱える悩みの深さがあるのかもしれない。
たとえば、総務省がこの2月に公表した消費支出に占める食費の割合を示した「エンゲル係数」は、近年じわじわと上昇している。2人以上の世帯では「28.6%」に上昇しており、2005年ごろからじりじりと上昇してきている。いまや1981年当時に近づいている。最近のインフレ傾向は、エンゲル係数をさらに上昇させる要因にもなる。食料価格の上昇は、とくに低所得世帯の家計を圧迫しており、貧困対策の重要性を高めている。
高市早苗首相の肝いりで給付付き税額控除などを議論する「社会保障国民会議」がスタートしているが、日経新聞の「核心 問題は格差ではなく貧困だ」(2026年3月2日朝刊)でも指摘するように、いまの日本に求められているのは、本当に必要な層に的を絞って届ける「再分配の効率化」だろう。
「貧困の連鎖や格差の拡大・固定化を防ぎ、社会の健全性を保つために、今こそ光を当てるべきテーマである」と再分配の効率化の必要性を指摘している。氷河期世代、その子ども世代、そして今回は触れられなかったが「ひとり親世帯」など、的を絞った救済をするべきだ。一律給付に偏る政策から、必要な人に必要な支援を届ける政策へと、そろそろ転換すべきではないか。
