このように訪問看護師が病院と在宅の要になることで、在宅の環境は整う。
慢性疾患を抱えているが病院が遠く、次の診療まで心身がしんどいという時期は、ぜひ訪問看護を入れて支えてもらってほしいと木村さんは言う。
「訪看は、利用したら人生が終わるまで続けなくちゃいけないとか、包帯ぐるぐる巻きで動けないような大けがや寝たきりでないと使えないとか、そんなふうに思っている人が意外と多いんです。そんなことはないですから」
訪問看護師が担っている「家族ケア」
外来ではなかなか行き届かないが、訪問看護ではできることには、家族ケアもある。利用者が夫、介護者が妻の場合、訪問中に夫婦げんかが始まってしまうのは“在宅あるある”の1つ。
「俺は痛くて動けないのに、妻がリハビリをやれって怒る」「夫は食べなきゃいけないのに食事を残す」など、どちらかが愚痴や不満を木村さんに訴えると、もう一方が反論するパターンだ。
木村さんは中立のスタンスで双方の言い分を聞くが、どっちもどっちだなというときは、それとなく妻の側につく。
「看護師が奥さんを否定してしまうと、その後の介護モチベーションに影響してしまいます。私は1週間に30分いるだけですが、それ以外の時間は奥さんが頼り。快く介護できる環境を作らないと在宅療養が成り立ちません。だから利用者さんにありきたりですが『○さんが寝たきりになろうがどうでもいいと思ったら、奥さんは怒らないんですよ』とか、そんなふうに仲裁します」
さらにそこで終わらず、妻には「旦那さんが生きてこそ」、利用
者には「奥さんあってこそ」と伝えてフォローする。それは決してその場しのぎの言葉ではなく、木村さんの本心である。
在宅療養が長くなると、よくも悪くも慣れる。そして疲れる。惰性が邪魔をしてお互いの真意が伝わっていないから夫婦げんかになってしまうことがほとんどだという。
「そういう点で、杉江さんの奥様は素晴らしい方です。ただただ見守るときと意見をはっきり言うときのバランスが本当に上手。私自身も見習わなければいけないなと、日々学ばせていただいています」
最後に、介護者の妻に木村さんからお願いが1つ。
「看護師に対する旦那さんの態度が悪かったとしても、どうか旦那さんを怒ったりしないでください。大丈夫、看護師はタフですから」
