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「右手に触るな!」リハビリを拒絶する脳卒中70代男性の心を開いた"意外なひと言"…訪問看護師が担う"家族ケア"のリアル

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訪問看護
訪問看護師の役割は、リハビリや身の回りのケアだけではありません(写真:nisimu/PIXTA)
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在宅の通所リハビリと、理学療法士による訪問リハビリを、週2回ずつ入れるケアプランが計画されたが、杉江さんが住む北海道乙部町では訪問リハビリの空きがなかった。

そこでケアマネから、訪問リハの空きが出るまでの期間限定で、リリーに声がかかったのである。

杉江さん宅まで車で片道1時間半。往復3時間で訪問時間は60分。木村さんはスタッフのやりくりをして週1回の訪問を引き受けた。

訪問初日、自室のベッドに端座位で座る杉江さんは、木村さんが入室しても視線は斜め下に向けたまま。麻痺のため、右上肢は手部がうっ血し紫色に変色している。

まずは上肢の血行促進だと木村さんは思った。右肩の可動域も狭くなっているのでストレッチもしたい。

「これから病院の先生の指示に従ってリハビリをしていきますが、何かやってほしいことや、逆にこれはやらないでということはありますか?」

木村さんは杉江さんに笑顔で尋ねるが、顔をあげずに返ってきた言葉は「右手を触られると、夜に火照って眠たくなるから触らないでくれ」。

右上肢NGときた。木村さんは明るく背中の肩甲骨を緩めるストレッチを提案。杉江さんは「背中だけだ。右腕に触ればダメだからな」と渋い顔で念を押す。そんなやり取りを杉江さんの妻は黙って見守っていた。

杉江さんの心が開いた「きっかけ」

重苦しい空気となってしまったが、初日に杉江さんの本心を知ることができてよかったと、木村さんは振り返る。

「入院中のリハビリも進んで、張り切って家に帰ってきたけれど、介助なしでは暮らせない現実に直面することになるわけで。気持ちがドーンと落ちて自分の状態を受容できないところに、私がこんにちは~って登場したら、お前が来たところでどうなるのさ?ってイラつきますよ。ここからがスタートだなと思いました」

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【あるひと言で、杉江さんの顔がパッと明るくなった】

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