変化の本質は「環境をイデオロギーから切り離し、オペレーションとイノベーションの言語で語り直す」という戦略転換と見ることができる。これを「脱政治化(depoliticization)」と呼ぶ人もいる。要は環境問題を党派的な争点から切り離し、純粋な経営合理性の話に転換しようということだ。
メッセージングの変化は、組織設計の変化と連動している。日本企業の環境担当は多くの場合、CSR部門やコーポレートコミュニケーション部門の傘下にある。つまり「広報機能」と同居している。この構造は、環境取り組みを「対外発信」として位置づけているという証左だ。
アップルが今回やったのはその逆だ。環境担当をCOOの管轄に統合することで、製造・調達・物流と一体の機能にした。つまり「環境責任を広報から切り離し、オペレーションに埋め込んだ」わけだ。
この差は決定的に大きい。CSR部門の環境対策は、業績が悪化すれば最初に予算を削られる。しかしオペレーション部門の環境対策は「コスト削減」「サプライチェーン強靭化」「歩留まり改善」として経営者に認識されており、不況下でも生き残る。政治的逆風にも揺れない。
「節電で電気代が下がる」「廃材を再利用して原料コストが下がる」は、イデオロギーとは無関係のビジネス事実だからだ。
ただ、この転換をするには経営者に相応の覚悟と戦略が求められる。
指標の「自社化」で、ESGスコア依存を脱する
もう一つの重要な変化が、計測指標の設計にある。多くの日本企業の環境対策は、外部の格付機関が設計したESGスコアの向上を目標にしてきた。しかしトランプ政権後、ESGスコアへの信頼性は急速に低下している。評価基準の統一もなく、政治的圧力で変動しうる外部指標に自社の環境目標を委ねることは、リスクだ。
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【環境対策と技術革新と経営効率が三位一体】
