東洋経済オンラインとは
ライフ

週1勤務のパート出身女性が社長に…中小企業を一変させた"脱・下請け"経営のすごい中身

13分で読める
かつて週1日勤務のパート従業員だった女性が変えた(写真:特殊衣料)
  • 坂本 光司 経営学者、人を大切にする経営学会会長
2/6 PAGES
3/6 PAGES
4/6 PAGES
5/6 PAGES

転機が訪れたのは、2000年10月のことです。札幌市が福祉産業の振興をはかるために、産学官連携で「福祉用具デザイン開発・研究プロジェクト」を設置しました。それまでの特殊衣料の取り組みが認められて、そのプロジェクトに参加することになったことから、特殊衣料、札幌市立高等専門学校(現札幌市立大学)、札幌市経済局などがメンバーとなり、北海道発の福祉用具の企画・開発が進められることになったのです。

プロジェクト会議では、寒冷地である札幌の地域特性を踏まえ、冬道での転倒時に頭部を保護し、軽くておしゃれで、誰でも安心してかぶることのできる「ユニバーサルな帽子」という、明確な商品コンセプトが決まりました。衝撃吸収の実験も行い、安全性の裏付けデータもとりました。そしてプロジェクトがスタートして2年後の2002年に開発に成功し、販売することになったのでした。

サイズもデザインも選べるよう、さまざまなバリエーションを用意し、日常生活に溶け込むデザイン性と高い安全性が人気を博しました。2004年には、北海道電力の検針員の帽子として採用されました。作業中の事故対策として、頭部を保護する作業帽として使われるようになったのです。

また2008年には、市販の普通の帽子に取りつけられる保護インナーも開発しました。2011年には、一般財団法人日本自動車研究所との共同開発もスタートし、いまでは障がい者だけでなく、子供から高齢者向け、さらには半導体工場などの作業中の事故防止用などに用途が広がっています。

顧客と一緒になって新商品開発を実施

アボネットの開発を機に、特殊衣料は理学療法士、看護師、デザイナーなど、各分野の専門家に協力を依頼し、社内プロジェクトチームをつくって商品開発を進めています。特殊衣料の願いは、「介護から快護へ」をモットーに、使う人の気持ちに寄り添い、よりよい商品や質の高いサービスを提供することです。中小企業の新商品づくりは、せっかく開発しても販売網の弱さなどで挫折してしまうことが多々あります。

特殊衣料では、そうならないためにも、とくに顧客の声を最重視し、顧客と一緒になって新商品開発を行ってきました。いわば、外部資源の内部化で、これまで開発してきた自社商品のテーマはすべて顧客の声からでした。経営資源に限界のある中小企業の場合は、「こんな商品がほしい」という顧客の声に真摯に耳を傾けるとともに、顧客を巻き込んでの新商品づくりが効果的であることを、特殊衣料は証明してくれています。

次ページが続きます:
【18年を超える障がい者の平均勤続年数】

6/6 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象