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週1勤務のパート出身女性が社長に…中小企業を一変させた"脱・下請け"経営のすごい中身

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かつて週1日勤務のパート従業員だった女性が変えた(写真:特殊衣料)
  • 坂本 光司 経営学者、人を大切にする経営学会会長
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その決定的な違いの1つが、商品企画力や研究開発力、提案力・販売力の有無、それを生み出す人財力の違いです。つまり、成長し発展し続けている企業は例外なく、時代が求める新しい価値を保有し、新商品・新サービスとしてタイムリーに社会に提案しているのです。生産力や設備力、生産管理力などのハードな経営資源力格差ではありません。ところが多くのモノづくり企業は企画力や開発力に力を注がず、人財不足や資金不足・販売力不足などを口実にして、新たな価値創造にチャレンジしません。その結果が、工場数の激減につながっているのです。

この点、特殊衣料は立派です。池田さんは特殊衣料にパートとして入社して以来、商品開発の必要性を進言し続けていました。そして社長に就任して4年目に、今日の主力商品の1つである「アボネット」という商標ブランドの保護帽の開発販売に成功しました。以来、特殊衣料は好不況にかかわらず企画・開発に取り組み続け、いまではアボネットのシリーズ化をはじめ、100をはるかに上回るほどの新規開発商品を世に出し、「研究開発型企業」「市場創造型企業」と呼ぶにふさわしい会社に変貌しています。

「娘のために、軽くて洗える保護帽をつくってほしい」

アボネットは、転倒した際の衝撃を和らげ、頭を保護するための帽子です。この帽子の開発のきっかけは、脳障がいを患う1人の女の子の親からの電話でした。「娘のために、軽くて洗える保護帽をつくってほしいのですが」

聞くと、「娘はフルフェイスのヘルメットを使っているが、その重さでしばしば転んでしまう」と言います。当時も頭部を保護する帽子は売られていましたが、ヘッドギアのような形のものが多く、見た目もさることながら、素材が固くて洗うこともできないものばかりでした。ちょうどそのころ、特殊衣料では、てんかんの症状のある実習生をクリーニング工場で受け入れており、発作を起こして倒れたときの対策を考えていました。工場の床はコンクリートなので危険なのです。

(写真:特殊衣料)

池田さんは、その女の子と実習生のために、軽くて洗うことができ、普通の帽子のように見えるデザインの保護帽づくりに取り組むことを決意します。リネンサプライ事業で、シーツのほつれや衣類の破れなどを修繕するための作業場があったので、そこを使うことを考えましたが、保護帽づくりはずいぶんと難航しました。特殊衣料には、帽子づくりのノウハウがなにもなかったからです。適した生地や緩衝材等を集め、何度も何度も試作を繰り返しましたが、納得のいくものをつくることができません。

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【顧客と一緒になって新商品開発を実施】

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