レストランで自然の食材を扱うといっても、その意味は店によって、国や地域によってさまざまだ。

たとえば北欧では、野草や海藻といった採集物が土地を読み解くための手がかりとなり、ペルーの「セントラル」では、それが標高や気候帯といった生態系をゲストに可視化させる要素になっている。「ナー」では、乾燥した大地の限られた水と強い日差しのもとで育つ野生植物の食材が、環境の厳しさを物語る。
一方、日本における山の料理はそれらとは異なり、「いつ現れるか」という感覚が重視される。ふきのとうのほろ苦さ、わらびの下処理といった要素は、季節の到来を告げる微細な兆しとして扱われる。
授賞式から4日後には年に1度のイベントを主催
授賞式から4日後、佐藤さんは山形・西川町に戻り、年に一度のイベントを主催していた。
その語呂から「山(3)菜(31)の日」と決め、出羽屋が主体となって、春の訪れを喜び、祝うイベントだ。町内はじめ山形県内の飲食店やカフェが料理を作り、販売。町民がボランティアもつとめ、山菜料理をはじめとするビュッフェには、長い行列ができていた。
「今回このような賞をいただき、大変光栄に思っています。2020年にシェフズテーブルをオープンさせてから、本当に多くのお客様や国内外のシェフの方々と知り合うことができました。
今回授賞式で、インドのガガン・アナンド(3位「ガガン」シェフ)さんと8年ぶりに再会しました。ガガンさんが山形に来てくれたときにヤマドリを一緒に解体したことを覚えていてくれて『あのときの若者がこうなったのか!』と言ってくれました。
今後もこの西川町という場所で、僕たちの目指す山菜料理をより多くの方に知っていただきたいと思っています。
ただ、僕の料理人として目指すところとして、今後も山に入り山にコミットしていきたいという思いがあります。そのことと店の営業に打ち込むという流れが一致してくれたらと思うのですが、今後ランクインのために頑張るかどうかというと、正直迷いもあります。
自分の料理人としての根源がこの山にあり、山での活動をやり続けたことで今回の結果があるのであれば、今後も山と向き合っていくという僕の本質は変わりません」(佐藤さん)
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【佐藤さんの周囲には30~70代の「師匠」がいる】
