作業が進むにつれ、ゴキブリ臭ではないもう1つのにおいが強まっていった。ゴミをバールで掘れば掘るほど、下からアンモニア臭が湧き出てくるのだ。どこからにおってくるのか。
ふと目についたのは、冷蔵庫の周辺に散乱している缶だ。キャップ付きのものでしっかりと閉まっているが、中身が残っている。
その中身は、尿だった。すべてではないが、かなりの数の缶に入っていた。
ゴキブリ臭とアンモニア臭、そして空き缶に残った乾いたビールの甘ったるいにおい。その3つが混じり合い、むせ返るようなかなりキツい臭いだ。
「トイレも風呂もゴミで埋まって使えない状態でした。だから、空き缶で用を足していたんでしょう。それも、数本の話ではありません」
風呂もトイレもゴミで山積みになって機能していなかったため、住人は近くにある空き缶に用を足し、そのまま部屋に放置していた。
溢れないよう少しずつ缶に溜め…
それだけではなく、プルタブを押し開けるタイプの空き缶にも尿が入っていた。住人は溢れないよう少しずつ缶に尿を溜めては、倒さないように部屋のあちこちに並べていた。
「水道は生きていましたし、水も出ていたんです。数メートル先の流しまで行けば捨てられたはずですが、それすらもこの住人にはできなかった。動くのすらつらかったんでしょう。尿意を感じても座ったまま動けない。ここまでくると、何か精神的な問題があったようにしか思えません」
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【ゴミの層をつくっていた水分のほとんどが尿だった】
