「学校にいる時間は、子どもや保護者への対応、行事準備、会議など、他者との関わりが必要な業務が優先されます。授業準備は1人で完結できるため、自宅で行うのが必然的な流れになってしまっています」
持ち帰り業務を行う理由として「仕事が終わらない」を挙げた教員は83.8%に達し、勤務時間は減少しても、業務量そのものの削減が進んでいないことを如実に物語っている。
文科省調査では、教員の持ち帰り業務を把握している教育委員会は40.3%にとどまり、勤怠管理の課題が浮き彫りになった。ただ、山崎氏はこの結果に対し、「教育委員会が持ち帰り業務の存在を認めるようになったのは一定の進歩。今後、実態把握が進み、具体的な改善策の議論が深まることを期待したい」と述べる。
クマ対策、除雪、ICT…若手を追い込む「雑務」
日教組は、主に35歳以下の若手・中堅教職員を対象に「2025年度青年部職場実態調査」も実施し、100人以上への聞き取り調査も行った。そこで挙がった声に共通することとして山崎氏が挙げたのは、「校務」の負担増だ。近年、地域によってはクマの出没や大雪といった事態への対応が学校に求められるケースが増えているという。
「登下校の安全確保は命に関わる重要業務ですが、クマが出没した際、警察に相談しても『行けたら行きます』と言われるにとどまり、教員自ら現場に立たざるを得なかったケースもあります。万が一の場合、教員がクマに勝てるわけはなく、子どもを逃がして自分が最後尾に残るという『命がけ』の対応を強いられています。除雪についても、通学路の安全確保のために教員が早朝から対応するのが当たり前になっている地域もあります」
さらに、学校現場へのICT導入が皮肉にも若手の負担を増大させているという。
「『若いからデジタルに強いだろう』と校務分掌でICT担当を押し付けられるケースが後を絶ちません。自分の仕事が終わっても、デジタルが苦手な先生からチャットツールの設定や使い方を一から教えて欲しいと頼まれ、気づけば18時を過ぎている。そんな光景が全国の職員室で繰り広げられています」
文科省の「GIGAスクール構想の下での校務DXチェックリスト」によれば、いまだに「押印が必要な書類」がある学校は9割を超え、FAXの使用率も7割を超えるなど、学校現場のDXは遅々として進んでいない。その理由は「検討する時間がない」と回答した学校が約4割に上る。学校単位での取り組みが進まないがゆえに、「ICTが得意」と見なされやすい若手教員に過度な負担が集中している可能性は否めない。
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【6割が「定年まで働き続けられない」】
