アグネス いえ。私は林さんの幸せをずっと願っていました。私は子どもの頃はイジメられっ子だったのですが、「もしも誰かに裏切られたり、いじめられたり、傷つけられたりしたら、その人の幸せを祈りなさい」と父に言われていました。
子どもの頃はそんなことはできないと思っていました。でも大人になるにつれてわかるようになりました。父の教えには、「自分自身が幸せな人は他人を傷つけたりはしない。自分の心に余裕があれば人の批判はしない」という深い意味があったのです。
直面した「世の中の常識」という壁
上野 なるほど。まずは自分を傷つけた人の幸せを祈るのだと。中国5000年の人間の知恵ですね。素晴らしい。
アグネス 私は林さんが結婚なさったと知って嬉しかったし、お母さんになったと聞いて大喜びしたんです。
上野 ただ、林さんはご自分の発言を撤回しておられません。少なくとも対談の時点では。「ご自分もお母さんになったことだし、そろそろアグネス批判を撤回なさったらいかがですか?」と伝えてみたのですが、「それは難しい」とおっしゃっていましたから。
アグネス いろいろな価値観の人がいていいと思います。私は誰に何と言われても、どう思われても、自分が悔いのない子育てをしたかった。
その当時、私が直面したのは世の中の常識という壁でしたが、でも、時代の変化に伴い、常識は人々のニーズに合わせて変化します。自分の行動で「アグネス論争」が起こり、「変化を求める人々」と「これまでの常識を守りたい人々」との間に自分が挟まれていたと思います。

