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ライフ #広がる新しい暮らし方 "廃居"という磁力

「屋根が落ちてからが本番」——廃墟を再生し"村"を作るまでになった元・建築家志望の20年

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屋根が落ちた廃墟
西村さんもスタッフも「屋根が落ちている」「床が抜けている」くらいでは動じない(写真:筆者撮影)
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そんな仕事無し、住む場所無しの西村さんに、先輩が救いの手を差し伸べてくれた。

「神戸市兵庫区のシャッター街になった商店街の空き家を改修している人で、その人の紹介でそのあたりで一番安い、月額1万5000円の倉庫を、やはり仕事のない音楽関係の友人たちと3人で借りることになりました。1人5000円です」(西村さん)

倉庫なので水回りはない。屋根はトタン葺きで時々飛んでいくこともあるので、「天窓の家」と呼んでいた。朝起きてみると入居してから自分たちで作ったキッチンが雪景色になっていることもあった。ドアは壊れていたので、人も猫もよく入ってきた。

「当時、周辺には日雇いで働いている人たちも多く、よくそうした、知らない人たちがいました。最初はイタチもいたのですが、臭すぎるので積極的に猫を入れるようにしたら、いつの間にか、いなくなりました。あとはネズミもけっこういましたね」(西村さん)

当然、何かが壊れても誰かに頼んで直してもらうお金はなく、自分でなんとかしなくてはいけない。DIYというより、生活再建とでもいうべきか。西村さんの廃墟や壊れた設備に動じない平常心はここで養われたのだろう。

次々と訪れた転機

ラーメン店でバイトをしながら建築事務所やデザイン事務所に出入りする日々を送っていた西村さんにある日転機が訪れる。神戸で不動産会社を立ち上げるから設計の仕事をしてほしいという依頼が来たのだ。

「それが神戸R不動産の小泉寛明さん。喫茶店でコーヒーをおごってくれました」(西村さん)

2011年のことである。当初は設計という話だったが、入社後はがっつり不動産の仕事もすることになり、宅建士の資格も取った。それでも最初の2年ほどの年収は200万円ほど。バイト時代よりは多少収入は増えたが、それで楽になったというほどではない。

そこにもうひとつの転機が訪れる。母が亡くなり、遺産として300万円を手にしたのだ。そこで西村さんはそれまで借りていた家を買うことにした。

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【廃墟の2世帯住宅を買ってみたら】

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