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「高齢者」の定義見直しなど…自民と維新の《連立合意書・13施策》から読み解く"今後の医療政策"

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高市首相
社会保険料は“搾取”されているのだろうか?(写真:Bloomberg)
  • 川﨑 真規 日本総合研究所 上席主任研究員
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財政制度等審議会(2025年11月)も、70歳以上の窓口負担割合について現役世代と同水準への見直しを検討すべきとの考えを示している※5。

誤解のないように付け加えると、これは「高齢者の負担を一律に上げる」という話ではない。経済的に余裕のある方には応分の負担をお願いし、余裕のない方は引き続き手厚く守る。

「年齢」という粗い物差しを、「実質的な経済力」というきめ細かい物差しに置き換えていくということだ。そしてその分、現役世代の保険料負担が和らげば、子や孫の手取りが増え、消費や結婚・出産といった社会全体の活力にも還元される。

方向性②:「生涯現役」がスローガンから制度へ

もうひとつの注目点は、13施策に含まれる「高齢者の定義の見直し」と「年齢に関わらず働き続けることが可能な社会」を目指す施策だ。

すでに具体的な動きは始まっている。在職老齢年金の支給停止基準額は、2026年度から月51万円→月65万円に大幅に引き上げられる※6。従来、一定以上の収入がある高齢者は年金の一部が支給停止となり、就労意欲を削ぐ要因と指摘されてきたが、基準額の引き上げにより、働きながらでも年金が減額されにくくなる。iDeCoの加入可能年齢も70歳未満に拡大される予定だ※7。

政府は65~69歳の就業率を29年に57%まで引き上げる目標を掲げている。23年実績の52%からの引き上げであり、「高齢者」の定義自体の見直しにも言及がある※4。

在職老齢年金の基準見直しやiDeCoの拡充は、「長く働くことが制度上不利にならない」環境を整えるものだ。人生100年時代において、60代・70代が経験や知見を活かして社会に貢献し続けられる環境が制度面から整いつつある。もちろん、健康上の理由で就労が困難な方への配慮は制度設計の段階で十分に議論される必要がある。

「家族・社会まるごと」の視点で考える

ここで、もう一度「家族・社会」という視点に立ち戻りたい。

社会保険料を「自分が取られるお金」ととらえると不満が募る。しかし視点を「3世代の家族、社会」に広げると景色が変わる。現役世代が納める保険料は、親世代の医療や介護を支える原資となっている。

もしこの仕組みがなければ、親の大病や介護の費用は家族が直接引き受けることになり、家計への負荷や就労への制約は、いまとは比較にならないものになるだろう。社会保障制度は、個人だけでなく家族・社会というユニット全体のリスクを和らげる装置として機能している。

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【自分がどう生きるかを設計する】

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