――退位の意向については、宮内庁は早くから安倍首相側に伝えていたのに、安倍首相は「考える余地なし」という姿勢で突っぱねていたという感じでしたか。
後にこのことに関わってきた体験に基づいて言えば、そういう流れも含めて、安倍首相の天皇観というのは、やはり「長州の人」と思いました。
私の高校の先輩の田原総一朗さん(評論家)から聞いた話ですが、明治維新の後、伊藤博文(元首相)一行がヨーロッパへ行っていろいろと勉強して、「政治のシステムなど、大体のことはわかったけど、最後に行き詰まったときに、向こうの人たちは『聖書』『神の名において』という理屈抜きの絶対権威を持ち出して収める。われわれは徳川幕府という絶対権威を潰して、代わりになるものが何にもない。そこで『天皇教』を発明した」と。天皇を神様にして、何かあったら「天皇の名において」と言えば収まる仕組みをつくったという説です。
安倍首相も、天皇陛下には、いてもらえばいい、実務はこちらでやるから、天皇は余計なことをせず、高齢になったら、摂政や国事行為の臨時代行を立てればいい、というのが本音だったのではないかという気がしました。
――退位の話が出て、安倍政権は有識者会議をつくりました。
それはもちろん関心を持っていました。ですが、有識者会議がヒアリングをしているとき、世の中の意向とはちょっと違う感じだな、と思いました。世論調査をすると、国民の75~80%が「生前退位を認めるべきだ」という回答を寄せているのに、有識者会議での有識者のヒアリングでは、五分五分、と。これには相当な違和感がありました。
この記事は有料会員限定です
残り 6929文字
