明確な理由はわからないが、中央線には「離れられない」引力がある
ここまで中央線の魅力を語ってくれた吉川さんだが、途中で弱点にも触れた。
「中央線は止まりやすい。運行本数が多いゆえに、事故も多いっていうのは間違いないですね」
JR東日本は2028年度末までに、都内の約120駅にホームドアを設置する計画を発表した。吉川さんも中野駅で「工事のマーキングがしてあるのを見た」そうなので、安全性の向上と遅延の減少が期待される。
遅延や混雑を差し引いても、中央線には人を引きつけるなにかがあるのだろう。「一度住んだら離れられない」という声は多く、吉川さん自身もそれを実感している。
「かつて、三善里沙子さんの『中央線の呪い』というエッセイが話題になりました。中央線沿線に住むと、住人はそこから抜け出せなくなる、という内容です。その本には、中央線が富士山から江戸城に流れ込む『龍脈』上に位置しているから、不思議な魔力が発生している、なんてことも書かれていましたね」
吉川さん自身も「なぜだろう」と首をかしげる。同じ沿線の住民同士で「なぜ中央線から離れないのか」と話題になることがあるものの、誰もハッキリした理由は言えないそうだ。
「なんとなくだよねって話はしたことがあります。でも、そのなんとなくが意外と強いんじゃないのかな」
続く後編では、吉川さんのいう「なんとなく」の正体に迫り、中央線沿いから離れない理由をひもといていく。
