博物館に並ぶ「略奪品」は誰のものか…帝国時代の展示品の返還に消極的な理由
まず「返還(repatriation)」という言葉を知っておく必要がある。これは、ある物をその国へ戻すプロセスを意味する。返還はイギリスやフランス、ドイツといったヨーロッパの旧帝国諸国で非常に熱い論議を呼んでいる問題だ。2017年にフランスのエマニュエル・マクロン大統領が就任した際、アフリカの植民地から奪ったものは元の国に返還すると宣言した。しかし全体的に見ると、イギリスはそれほど積極的ではない。マンチェスター博物館のような小規模な博物館や、一部の大学、個人の収集家らは帝国時代に奪われた品々を返還している。しかし、最も有名な係争品を所蔵する大規模な国立博物館は、依然として返還に消極的だ。
大規模な国立博物館が返還に消極的な理由
それにはいくつかの理由があげられている。
1.それは容易ではない
どの品が略奪されたもので、どの品が正当に購入されたり寄贈されたものなのかを調べるのは、長い時間のかかる複雑な作業だ。
2.誰に返すのか?
略奪されてから何百年も経っているため、返還先が誰なのかはっきりしない場合もある。
3.博物館にとっての価値
これらの品々の多くは博物館で人気の展示物であり、それを失うことは大きな打撃となる。
4.線引きの問題
もし博物館が一点でも返還すれば、他の多くの品々も返さないといけなくなるのではないかという懸念がある。2010年、インドがコ・イ・ヌールダイヤモンドの返還を求めた。当時の首相デイヴィッド・キャメロンは、「一つでも返還を認めたら、大英博物館は突然空っぽになってしまう……だから現状維持が不可欠だ」と主張した。しかし、これは誤解を招く表現だと思う。大英博物館の展示品は所蔵品全体のわずか1%に過ぎず、仮に返還を求められ論争の的となっている品々が一夜にしてすべて返還されたとしても、所蔵品の大部分は残るだろうと私は思う。
こうした意見の対立をふまえて、博物館を訪れることに不安を感じる人がいるかもしれないが、心配する必要はない。博物館の職員の多くは、こうした問題について話し合いたいと考えている。また、大きな博物館がようやく圧力に応え始めた兆しも見える。いくつかの博物館は、問題視されている品々を長期的に元の持ち主へ貸し出す取り組みを始めた。政府でイギリスの主要な博物館を管轄したことのある元閣僚は、もっと多くの品々の返還が必要だと発言した。
さらに、略奪された展示品の横に、その歴史やイギリスに渡ってきた不公正な経緯を説明する掲示を行う博物館も現れた。これでは不十分だとか、歩みが遅すぎると感じるかもしれないが、これも第一歩なのだ。
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