「机上には、書きかけの原稿」朝ドラ「ばけばけ」セツに看取られ54歳のハーンは"遠い旅"へ
「私あの有様見ました、心痛いです。今日もう面白くないです。もう切るないとあなた頼み下され」
そう言われたが、セツも寺に行く気がしなくなり、そのうちにどんどんと寺の木が切られていった。どうも老僧から若い僧に代わってから、伐採が顕著になったようだ。
セツは気落ちするハーンを見て、引っ越しを決意する。「瘤寺がこんなになりましたから、私は方々捜させました」とのちに書くように、家探しを始めることになった。
ハーンが新居でこだわった「3つの条件」
いつまでも借家住まいで暮らすのではなく、小さくとも一戸建てを自分の好きなように建てたい――。
そんなセツの願いを受けてハーンは、隠岐島や出雲に家を建てることを提案。だが、セツにその気はなく、見つけ出した西大久保の売り屋敷を買うことが決まる。完全な日本風の家で、あたりに西洋風の家さえなかったという。
新居をどんなふうにするかについて、ハーンは次の3つの条件を出している。
「冬の寒さには困らないように、ストーヴをたく室が欲しい」
「書斎は、西向きに机を置きたい」
「万事、日本風に」
それ以外のことについて相談しても、ハーンは「ただこれだけです。あなたの好きしましょう」と言うのみだったという。転居を繰り返したハーンが、たどり着いた住まいの理想の条件だったのだろう。
明治35(1902)年3月19日、ハーンとセツは西大久保に居を移す。富久町よりも家屋敷が広くなった。また、静かで、裏の竹やぶからはウグイスの声が聞こえてくる。そんな環境に、ハーンはいたく喜んだようだ。





















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