「バッテリー24時間」で批判されたバルミューダ「The Clock」、便利さでは測れない"時間の質"という価値

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The Clockの文字盤に針はない。その代わり、文字盤そのものが発光し、時刻を光の明滅とLEDの動きで表現する。“時刻”の数字が内側から光り、“分”と“秒”は外周を埋めるLEDで示されている。写真では伝わりにくい部分だが、この光は、いわゆる「光る文字盤」という言葉が掻き立てる想像とは少し異なっている。

光による表示は刹那的で軽く(エフェメラル)に感じられる。The Clockでは、今、この瞬間の時・分・秒をソリッドなアルミを白くペイントし物質化することを目指したかに見える(実際はペイントではなく発光)(写真:バルミューダ)

寺尾氏には「光っているのではなく、白くペイントされているように見せたい」というこだわりがあった。ピカッと光るのではなく、そこだけ静かに白い。室内光を受けた白い塗料面のような、柔らかく拡散した光。

これを実現するために、文字盤には想像を絶する工程が費やされている。2色成形という技法を使い、不透明な樹脂に透明な樹脂を72ヵ所個別に流し込む。しかし、通常の製造では、樹脂を流し込む口は1ヵ所にしか設けられない。

そこで、まず2層の部品を作り、それを精密に削って72ヵ所の乳白樹脂が入った部品を生成し、さらに塗装してレーザーでエッジングする。分解しても、その製法が解読できないほど秘匿された精度の工芸だ。一応、特許は取ったというが、「コストがかかりすぎるため、誰も真似をしないと思う。(元アップルの)ジョニー・アイブですら、この文字盤を見て“クレイジー”とつぶやいていました」と寺尾氏。

照度センサーでコントロールされた75個のLED

文字盤には機能を示すものなども含め、計75個のLEDが使われているが、その明るさは正面に用意された照度センサーで細かくコントロールされる。LEDの明るさは256段階だが、そこに“ディザリング”という技術を組み合わせることで、実質的には明るさを約3000段階で調光している。

The Clockは寝室でも使われる道具だから、そこまでの調光が必要だったと寺尾氏は説明する。完全に遮光した寝室では5ルクス、一方、屋外の直射日光は10万ルクスでの表示が必要となる。その10万倍以上の輝度差の中で、文字盤が常に“ちょうどよく見える”ためには、照度センサーによる自動調光が不可欠だった。この繊細な追従が、どんな場所でも“そこにあることが自然”というあり方を生む。

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