「バッテリー24時間」で批判されたバルミューダ「The Clock」、便利さでは測れない"時間の質"という価値

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このスピーカーの開発にあたって、寺尾氏が力を借りたのが、アップル製品の多くを手がけてきた音響部品メーカーだ。バルミューダと協業関係にある世界的デザイナー、ジョニー・アイブ氏から紹介を受けたそのベンダーは長年にわたって、アップルと共に音響技術を磨き上げてきた。

その知見と技術が、この小さな筐体の音に注ぎ込まれている。「音楽のことをいろいろとやってきましたが、前後左右の立体感がこの小さなボディから出るのを初めて体験したときは驚きました」と寺尾氏自身も率直に語る。

収録された7つのサウンドトラックは、すべて社内デザイナーと外部ミュージシャンによるチームが制作したオリジナルだ。フィールドレコーディングによるリアルな音源と、生楽器の演奏を緻密に組み合わせ、一曲一曲仕上げていったという。

中でも寺尾氏が特に愛着を示すのが「Long Rain」と名づけられた曲。夏から秋へ移ろう夜の草むらに、静かに雨が降り、コオロギが鳴いている。遠くでは雷鳴が低く響いている。その雷鳴は背後から、時折落ちる水滴はすぐ手前から聴こえるようにエディットされている。この前後の音の配置は偶然ではなく、The Clockの音響特性を熟知したうえで、意図的に設計されたものだ。

“Lodge”は暖炉の薪がはぜる音の奥でピアノが深く鳴り、“Departure”は旅立ちの静かな寂しさをギターの音色に込めた曲。「飛行場へは、自分や誰かが旅立つときに行きます。そこには家族や親しい友人とのしばしの別れがあり、その寂しさを思い出しました」と寺尾氏はその着想を語った。

緻密に制御された光の演出

音が空間の奥行きを作るなら、光はその空間に時間を宿らせる。

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