「バッテリー24時間」で批判されたバルミューダ「The Clock」、便利さでは測れない"時間の質"という価値
寺尾氏は開口一番、久しぶりに工場にまで足を運び、愛情を込めて作りあげた新製品が完成したと語って、化粧箱から正方形のアルミの塊のようなものを取り出し、私に手渡した。
一瞬、時計かと思ったが、時計にあるべきもの――“針”がない。しかし、中央に向かってわずかに凹む形状は日時計を引用しているようだ。また製品の上には懐中時計から引用したという心地よいトルク感で回るクラウンもついている。
寺尾氏は、詳細に触れる前に2つの時間の概念から話し始めた。ケース氏が使ったクロノス時間、カイロス時間に似ているが、彼はこれを“時刻”と“時間(時の流れ)”という言葉で表した。
「“時刻”というのは人間社会の基盤で、数字で表される記号です。試験が9時から始まりますとか、それを逃すと人生が狂うぐらい大事なことですが、時刻はあくまで人間の発明なので人間にしか通じません。でも、世界全体は“時間”で動いていて、私たちが実際に過ごしているのもこちらのほうです。最近、私は良い時間を過ごすことほど、人生で大事なことはないと考えていて、少しでもその手伝いになる道具ができないかと思ってこれを作りました」
こう言って寺尾氏は少し照れながら、大胆にもこの製品を「The Clock」と名付けたのだと語った。
“clock(時計)”の語源は、中世ラテン語で“鐘”を意味する“clocca(クロッカ)”だ。教会などの塔に設置され、音で時刻を告げる機械式時計(時報)に由来しているが、実はバルミューダのThe Clockも、製品コンセプトとしては時計という言葉が指す“時を計る”装置というよりは、音を通して“時間の流れを感じる”装置に近い。正確な時刻を知ることが目的であれば、常にインターネットで時刻の補正を行っているスマートフォンなどのほうがよほど優秀だ。
では、バルミューダはThe Clockを通して、どのように質の高い時間を提供しようとしたのか。
1時間に一度の“小さな儀式”
The Clockには、1時間に一度“小さな儀式”がある。
正時を迎えると、チャイムが静かに鳴り響く。それと同時に、文字盤の光が振り子のようにゆっくりと揺れ始める。左へ、右へ──重力に従うように、急がず、乱れずに。





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら