「東京に行きたがるセツ、渋るハーン」朝ドラ「ばけばけ」地獄の東京にハーンが長く住み続けた背景
「お寺は荒れていましたが、大きい杉が沢山ありまして淋しい静かなお寺でした。毎日朝と夕方は必ずこの寺へ散歩致しました。度々参りますので、その時のよい老僧とも懇意になり、色々仏教の御話など致しまして喜んでいました。それで私も折々参りました」
しまいには、この寺に住みたいとまで言い出した八雲。「坊さんになるさえもよきです」とも口にしている。セツに「同じ時、あなた比丘尼となりましょう」と誘うくらいだから、よほど気に入ったようだ。
来客は断り社交場には近づかなかった
それでもハーンは、東京に骨を埋めるつもりはもちろんのこと、長期滞在する気すらなかったようだ。セツにこんなふうに言っている。
「東京には3年より我慢むつかしい」
住んでみたら気にいって長くいた……ということでもなかったようだ。ハーンはセツに「もう3年になりました。あなたの見物がすみましたら田舎に参ります」と言い出すことも、たびたびあったという。
人間関係については、学生たちとは松江の頃のように良好になったものの、同僚とは相変わらず馴染めなかったり、またハーンと交流を持ちたいというわずらわしい来客も相次いだりした。
もともと住みたくない東京だ。嫌になってまた違う場所へと向かってもおかしくはなかったが、かえってハーンは執筆に打ち込むことができたらしい。
来客は「時間を持ちませんから」と断り、社交場の誘いには「人生はあまりに短し」と返答して欠席。ひたすら書斎で執筆し、大学で授業する日々を過ごした。
ハーンはこの東京の地で、セツの協力も得ながら、代表作となる『耳なし芳一』『のっぺらぼう』といった怪談を次々と生み出すことになるのだった。
【参考文献】
E・スティーヴンスン著(遠田勝訳)『評伝ラフカディオ・ハーン』(恒文社)
牧野陽子著『ラフカディオ・ハーン-異文化体験の果てに』(中公新書)
小泉八雲著、池田雅之編『小泉八雲コレクション さまよえる魂のうた』(ちくま文庫)
小泉節子著、小泉八雲記念館監修『思ひ出の記』(ハーベスト出版)
小泉凡著『セツと八雲』(朝日新書)
NHK出版編『ドラマ人物伝 小泉八雲とセツ:「怪談」が結んだ運命のふたり』(NHK出版)
工藤美代子著『小泉八雲 漂泊の作家ラフカディオ・ハーンの生涯』(毎日新聞出版)
櫻庭由紀子著『ラフカディオハーンが愛した妻 小泉セツの生涯』(内外出版社)
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