「努力すれば成功できる」は本当か…数百万人規模の遺伝子データが揺さぶる教育の前提

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それはたとえば、

・教育格差や社会格差は、そもそもどのように生まれるのか

・平等とは何を意味するのか、それを実現するとは遺伝的な差異をどのようにマネージすることなのか

・政治的文脈で語られる「国民」という抽象的存在の背後にあるリアルな遺伝的個人差をどう考えるか

・想像を超える遺伝的多様性から生み出されたこの社会を構成する一人一人が担うべき社会的責任とは何か

遺伝が無関係とはもう言えない時代に

こころは遺伝する: DNAはいかに〈わたし〉を形づくるか
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これらの諸難問に対して、答えをだすのは行動遺伝学者一人ではない。われわれ一人一人が、わがこととして自分の人生の中で問い続けねばならない課題である。知識人と呼ばれる人たちがまず取り組まねばならないのも、単なる行動遺伝学の誤解・悪用への警鐘ではなく、こうした問題であるはずである。

われわれ行動遺伝学者が明らかにするのは科学的事実である。残念ながら現代の経済・教育・政治の制度は、そこで明らかにされた事実、すなわち遺伝的個人差をほとんど前提にしていない。しかし、遺伝が無関係とはもう言えない時代に入った。

本書はその意味で、控えめに言っても「革命」である。私たちが当たり前と思ってきたさまざまな概念(平等、公正、能力、疾患、教育、努力など)の前提が変わる。この革命は両刃の剣だ。遺伝を認めつつ、それを差別の正当化に結びつけないという知的成熟が不可欠である。

遺伝を否定することが「良識」だった時代は終わったのだ。事実は不快であることもあるが、そこから逃げることは、もはやできない。

安藤 寿康 行動遺伝学者・慶應義塾大学名誉教授

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あんどう・じゅこう / Juko Ando

1958年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。慶應義塾大学名誉教授。教育学博士。専門は行動遺伝学、教育心理学、進化教育学。日本における双生児法による研究の第一人者。この方法により、遺伝と環境が認知能力やパーソナリティ、学業成績などに及ぼす影響について研究を続けている。

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