なぜトランプ大統領はイランへの攻撃に踏み切ったのか?インテリジェンス軽視の楽観論が招く「取り返しのつかない失敗」

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こうした過小評価と楽観論に基づく戦争開始の例としては、ロシアのウクライナ侵攻があげられる。

そして日本も80年前以上に同じ過ちを経験した。アメリカの国力が日本を大きく上回ること、戦争が長引けば不利になること、勝算が乏しいこと等は、戦前から分析されていた。

それでも開戦に踏み切り、悲惨な結果を招いた。国家規模、時代を問わず、こうした誤りは繰り返されている。

日本の中国過小評価がもたらすもの

この教訓を日本にひきつけて考えると、現在の「中国への向き合い方」が浮かび上がる。日本が低迷する一方で中国の国力が増すなか、SNSでは中国を軽視する言説が目立つ。

G7首脳が相次いで中国を訪問するなか、高市政権は支持層向けなのか、中国に対する強硬姿勢を誇示し続けている。

しかし、冷静にみれば、中国の経済規模は日本の4.6倍、人口は11.5倍、国土面積は25倍。軍事力も中国の世界3位に対し、日本は同7位である。

隣国である中国は確かに脅威だが、対抗手段は本当に軍事力だけなのか。「攻められないだけの軍事力が必要」という主張は一見もっともらしいが、中国が日本以上のペースで軍拡を進めるなか、どこまで軍事費を増やせばよいのか。

アメリカとイスラエルは、イランが核を持つことは許さないとして攻撃に踏み切った。こうした行動を日本が容認すれば、極端な話、日本が核保有を議論するだけでも、中国に攻撃の口実を与えかねない。

そもそも、最悪、中国との紛争に陥った場合、その出口はどこにあるのか。むしろ、経済・産業・技術面での対抗策をもっと真剣に検討すべきではないだろうか。

私たちにできることは何か

今は、イラン戦争の早期収束を願うばかりだが、この機会を、日本が中国とどう向き合うべきかを考える契機としたい。

政府の判断は私たちの生活に直結し、戦争となればその影響は計り知れない。しかも、冷静なインテリジェンスを軽視した政治判断は世界中で繰り返されている。

では、私たちにできることは何か。まず、世界で何か起こっているのか、その大きな構図のなかで日本がどの位置にあるのか、といったことにもっと関心を持つことだ。

玉石混合の情報を見極める目を養い、政府が誤った方向に進みそうなときには、主権者としてそれを止める必要がある。

日本は民主主義国であり、選挙などを通じて意思を示すことができる。これを怠れば、その災いは私たち自身に降りかかる。政府への白紙委任などもってのほかである。世界の動きを見据え、日本がどのような立ち位置を取るべきか、今こそ、冷静に考える時である。

武居 秀典 国際情勢アナリスト

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たけい・ひでのり / Hidenori Takei

一橋大学卒業。三菱商事で主に調査・分析業務に従事。調査部長や北京現地法人社長を歴任。
ロンドン、ニューヨーク、北京などに計14年間駐在。
2023年同社退職後、企業向けアドバイザーや研修講師などを務める。

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