吹奏楽部「大編成の存続危機」が実はチャンスと言えるワケ、《指導と編成》進化のカギを握る驚きの"先端技術"とは?

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今後は単に「楽しい」だけの音楽にとどまらず、知的な愉悦を伴い人間の感性を育む「アート」としての吹奏楽を具現化できなければ、吹奏楽部の存続も難しいのではないか。

この現状を打破するためには、古典作品から音楽的深みを学び直す“温故知新”の姿勢と、地域響のような小編成を再構築して丁寧に子どもたちの音楽的素養を育てていくことがカギになると考えている。地域展開における一丁目一番地だと言っても過言ではない。

そのためには、指導法も変えなければならない。他分野に目を向ければ、吹奏楽界の指導観の古さがよくわかる。例えば、スポーツ界は科学的な研究に基づき、普遍的な身体性を分析して、個人の能力を最大限に引き出すことで産業やエンターテインメントとして強固な基盤を築いた。部活動でもエビデンスを生かした指導を採り入れる事例が増えてきている。

だが、吹奏楽界は経験則や感覚に基づいた伝統的指導法に固執しており、数理的・定量的研究が展開されたことはほぼ皆無である。

吹奏楽が存在価値を示し続けるためには、科学的進歩も取り入れ、指導と編成を再定義する必要があるだろう。そのことが、持続可能な吹奏楽部の活動につながっていくのではないだろうか。

「AI×吹奏楽指導」の可能性

実はすでに、数十年前から音楽演奏に関する諸要素を、感覚や経験だけに頼らず、数やデータに基づいて客観的に評価する研究が行われている。

その代表格の1つが、1993年に創設された一般社団法人情報処理学会音楽情報科学研究会(Special Interest Group on Music and Computer、以下、SIGMUS)である。国内有数の研究者によって構成され、音楽におけるAI活用の最先端の活動を展開しており、吹奏楽指導に利用できる研究もあまた存在している。

SIGMUS会員である、九州大学文化知能科学研究室の中村栄太准教授はAIを活用し、「未来の音楽はどう進化するのか」といった予測をはじめ、自動での音楽生成・採譜・伴奏等、極めて多角的に音楽における諸要素を定量化的に解析し、生身の人間の演奏へどのようにフィードバックさせるかを研究している。

中でも、同研究室の尾上悟嗣さん(工学部)と中村准教授による「吹奏楽演奏分析のためのチューナーマイク録音に対する採譜モデルの適応学習」と銘打った研究は、演奏の定量分析に基づく練習および指導の支援を目的としており、これからの地域響にはうってつけであろうと思われる。

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