予知能力者は「幸せになれない」? 残酷すぎる宿命に『フリーレン』南の勇者が示したまったく新しい答え
が、しかしどの人物も、幸せな最期を迎えるのではなく、途中で死んでしまったり、自分の死の未来や悲劇の結末を変えられずに終わってしまう場合が多いのです。
ギリシア神話に登場する予言者・カッサンドラ
実は、この「予知能力者が悲劇的な結末を迎える」というテーマは、古代神話にまで遡ることができます。ギリシア神話に登場するカッサンドラは、イーリオス(トロイア)の王女にして、アポロンから未来を見通す能力を授けられた人物です。
しかし、アポロンの愛を拒んだことへの報復として、「カッサンドラの予言を誰も信じない」という呪いをかけられてしまいました。怪しい木馬の中にギリシア兵が潜んでいることも、トロイアが滅びる運命も、自分が死ぬことも知っていながら、そしてそれらをすべて語ったにもかかわらず、誰にも信じてもらえず、ただ悲劇を傍観するしかありませんでした。
未来がわかっているのに変えられない――これは、予知能力者の悲劇の「原型」と言えるでしょう。
このカッサンドラ的な悲劇のパターンは、現代のフィクションにも形を変えて受け継がれています。
西尾維新のデビュー小説『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』に「姫菜真姫」という人物が登場しますが、彼女は自分が惨たらしく死ぬ運命を悟っており、実際にその予言通りの結末を迎えます。未来を知ることが「生の充実」につながるのではなく、むしろ「宣告された死刑」のように重くのしかかっているキャラクターだったわけです。
TBSのドラマ『SPEC』では、冷泉俊明という人物が「絶対預言者」として登場し、物語の鍵を握る存在として描かれます。未来が見えることで金や権力を手にしながらも、「生きている実感がない」と嘆くシーンが印象的です。すべてが予め決まっているなら、驚きも感動もありません。人間にとっての喜びは、未知の何かに向き合う瞬間にこそ宿るのかもしれません。




















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