労働者と雇用主が社会保険料を支払わないことを違法と判断、中国で進む「社会保険改革」に労使とも不満を持つワケ

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エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)のアジア担当アナリスト、ニック・マロ氏はこうした事例について「中国指導部が直面する政策上のジレンマを象徴している。それは長期的な利益のために短期的な痛みを許容できるかというものだ。今回のケースでは、その答えはノーのようだ」とし、「これは他の困難な市場ベースの改革を考える上で参考になるだろう」と指摘した。

雇用主が収入の約25%、従業員が収入の約10%をそれぞれ拠出することを義務付けた決定は、社会保障網の強化を目的としている。これは労働者が将来の備えとして個人貯蓄に回すのではなく、現在より多く消費するよう促すための重要な一歩となる。

同時に、この施策は労働コストを上昇させる。このような拠出を回避してきたことが中国の競争力を強化し、輸出を主要な成長エンジンに変えられた経緯がある。

拠出義務の順守に苦慮

ハーバード大ケネディスクールのモサバー・ラマーニ・センター・フォー・ビジネス・アンド・ガバメント研究員のリチャード・ヤロー氏は、企業収益を圧迫する国内需要の低迷、関税、高水準の債務、産業の慢性的な過剰生産能力に起因する価格競争を受けて企業は拠出義務の順守に苦慮していると指摘。「競合他社が社会保険料の支払いを回避しているなら、なおさら順守しない理由がある」と語った。

ある産業用バルブメーカーの経営者は、当局から順守するよう圧力を受ける事態にはならないと予想する。なぜならば、その場合には自社のような工場を「つぶす」ことになるからだと指摘した。

べつの家具工場の経営者は法定基準を下回るものの、以前より高い保険料を支払っているとして「当社の負担は既にかなり重い」と打ち明けた。

EIUのマロ氏は、企業の利益率が低いことから当局は「企業が手抜きをすることをある程度黙認してきた」とし、「これは当局が直面する難しい選択を反映している」との見方を示した。

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