しかし、今回のイラン攻撃を機に、こうした苦し紛れの戦術が象徴する、プーチンの腰の引けた対トランプ外交に対し、ロシア国内から懸念の声が出始めた。
最も代表的なのが、ウクライナ侵攻の必要性を事前に強く訴え、プーチンの対外強硬策を強く支持してきた民族主義的極右思想家、アレクサンドル・ドゥーギンの発言だ。
「イランの次はロシアと中国への攻撃だ」
ドゥーギンは自ら関わるサイトでこう訴えた。イランに対するアメリカとイスラエルの攻撃を受けて、「世界における力のバランスは変わった」と。そのうえで、今後「イランが降伏した場合、アメリカが同様の圧力をほかの国に対しても広げる契機となるだろう。そしてその対象となるのはロシアと中国だろう」と述べて、イラン攻撃終了後、トランプ政権の攻撃の矛先が中ロに向かう可能性があるとの懸念を示したのだ。
ドゥーギンはその後、YouTube番組で明確にプーチン政権にこう警告を発した。「トランプは今や、(対外介入を嫌う自らの熱狂的支持層)MAGAから離れて、(かつてイラク戦争などを主導した)ネオコン的立場になった。彼はイランなど、われわれの同盟国への攻撃を始めた。力には力で対抗するしかない。われわれにも核がある。力を示すしかない」
ドゥーギンが言いたいのはこういうことだ。今はウクライナ紛争の和平仲介をしているトランプだが、いずれネオコン的な立場からロシアに対しても、攻撃的姿勢に転じる可能性がある。
このため、プーチン政権に対し、トランプ頼みの和平仲介が難航している今、トランプ政権への融和的立場をやめ、力でアメリカに対抗する政策に戻すべきだと言っているのだ。
こうしたドゥーギンによるプーチンへの警鐘の背景には、今回のイラン攻撃がロシア国内に与えたショックの大きさがある。
ロシアとイランは正式の軍事同盟国ではない。したがって、アメリカが攻撃してきても、ロシアに軍事的に支援する義務はない。
しかし、ウクライナ侵攻後、イランは自ら開発した攻撃用ドローン「シャヘド」をプーチン政権に提供。ロシアはこのモデルの生産を国内で大々的に開始し、その後改良を重ねて、今やウクライナに対する空爆の主力兵器になっている。
つまりロシアにとって、イランは軍事的に恩人とも言える存在なのだ。おまけに25年1月にロシアはイランとの間で両国の包括的戦略パートナーシップ条約に調印したばかりだ。そのイランに大規模な攻撃を仕掛け、ハメネイ師まで殺害したトランプ政権への怒りが、ロシア政界では高まっているのだ。





















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