まるで中道改革連合のよう? Netflixと破局のワーナーが、パラマウントと近づく背景 「ワーナー買収」の行く末は?

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そうした前提に立てば、今回の撤退は単なる消極的な判断とは言い切れません。もしNetflixがワーナー買収を諦めずにいたら、巨額の負債とテレビ事業が加わり、営業利益率は希薄化する可能性が高かったでしょう。

ただし、ここで強調したいのは「だからNetflixは買うべきではなかった」という単純な話ではないということです。ワーナーが保有する「ハリー・ポッター」をはじめとするIP群の戦略的価値は大きく、Netflixにとっても魅力的な資産であることに変わりはありません。

問題は、何を買うかではなく、どう統合するかです。今回Netflixが対抗条件を提示しなかったのは事実です。けれども、それはIP戦略を放棄したという意味ではなく、価格や条件、統合リスクを踏まえたうえで「今回は踏み込まない」という判断だった可能性が高い。

市場環境や条件が変われば、再び動く余地は残されています。今回の撤退は終着点ではなく、選択肢の1つを閉じたにすぎない。筆者はそう読んでいます。

今後のメディア業界の「勝ち筋」とは

では、そもそも「勝ち筋」とは何なのでしょうか。ここで参考になるのが、イギリスの調査会社Ampere Analysisのアナリスト、Guy Bisson氏の分析です。

Bisson氏はメディア企業を「制作」と「流通」、「グローバル」と「ローカル」という軸で整理し、どの領域を横断できるかが競争力を左右すると指摘します。そのうえで、今後主流になるのは同業同士の単純な足し算ではなく、異なる領域を横断する「斜めの統合」だと指摘します。

水平統合は規模を生みますが、それだけでは構造の転換にはつながらない。制作と流通、グローバル展開とローカル適応をどう組み合わせるかが生存のカギになるというわけです。

その視点で見れば、ワーナーとパラマウントの統合は、少なくとも典型的な「斜めの統合」とは性質が異なります。規模の拡大にはなっても、収益設計そのものを組み替える動きとは言い切れません。

いずれにせよ、大型メディア統合である以上、規制当局の審査という高いハードルは避けて通れません。再編劇は、まだ続くでしょう。政治的な力学がどこまで作用しているのかも、現時点では明確ではありません。ただ、問題は「誰が買うか」ではなく、「どの構造が持続可能か」。そこにこそ、今回の買収劇の本質があるのではないでしょうか。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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