「僕はもう邪道中の邪道」「番組が低視聴率で思い知った」…過去の失敗も赤裸々に語る、《古舘伊知郎》71歳の現在地
「今はすごいフェイクが横行していますよね。なぜなら嘘や陰謀論のほうが人の注目を集めるから。人間は嘘が好きだからこそ、その反動で、嘘はダメだっていう正義原理主義が生まれてくるんだけど、この正義原理主義もどうなんだろうと。この世なんて幻だろ、この世なんて嘘の言葉でやってんだろうと開き直っているんです。
陰謀論にどっぷり浸かったら楽で楽しいだろうけど、それも嫌だし。かといってすべて疑ってかかるのも苦しい。いつも半信半疑でいるぐらいがちょうどいいさじ加減かなと思ってるんです」
エゴの発露と容赦ない駄目出し
そうした“無駄なしゃべり”をすべて昇華させたのが『トーキングブルース』の礎となる。
それゆえ、制作過程では、スタッフから「あなたは何をしゃべりたいのか」という徹底したエゴの発露を求められる。しかし、いざネタを出すと、今度は「それは面白くない」「これじゃ重すぎる」など容赦ない駄目出しの応酬となる。
「そこで『俺のトーキングブルースだろ!』と怒ると、『あんたのじゃないよ、お客さんの「トーキングブルース」です』と返されて、俺のエゴが修正されていくんです。エゴを要求されて乗り込んだはずなのに、途中の駅でそのエゴを降ろせと言われる。
でも、どうしても譲れないことは、スタッフを裏切ってでも本番でしゃべるんです。これほど溢れんばかりにしゃべりたいことがあるということは、お客さんも共鳴現象を起こしてくれるはずだと、そう信じてやまない場合にスタッフを裏切ります。そうやって、最後はまた『俺のトーキングブルース』に戻るんです。もはや『トーキングブルース』というのは人間修行そのもの。ぜんぜん楽をさせてもらえない」
その言葉通り、古舘氏の周囲には厳しい意見を言ってくれるスタッフや仲間が集まっている。むしろそうした人たちと共にいることをあえて選んでいるという節もある。
「自分が矢沢永吉みたいなものすごいアーティストというわけでもないのに、俺がイエスマンを揃えたら、超小規模なジオラマみたいなもので、最低ですよ。だから本能的に、自分にノーと言ってくれる人を求めているんだと思います。文句を言ってくる人、厳しいことを言ってくれる人。彼らの言葉にいちいち、ちくしょうと思いながら、また何かをひねり出して。これならいいだろうと言いながら、また考えたりすることができるから。
僕は『急がば回れ』という言葉が好きなんですけど、こういう仕事に工場の生産性みたいな効率性はいらないと思ってるんです。そうやってめんどくさく否定されて、じゃあこれはどうだとかじりついていくということがないと、本当に自分からひねり出されるものはない。やっぱり自分を信用してないし、人によって自分は作られてると思っていますから」
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