「未成年のサイバー犯罪」背景に3つの格差、倫理教育で闇落ち防ぐには? 「ホワイトハッカーに転身させろ」で解決しない訳

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私はこの承認格差こそが、“未成年の闇落ち”を加速させている最大の要因だと思っている。技術教育や倫理教育をいくら整えても、現実世界で承認される役割を用意しなければ、若者はネットの評価にすがってしまう。

情報格差、所得格差、承認格差。この3つが重なったとき、未成年は驚くほど簡単にダークサイドへ傾いてしまう。

被害者目線だけの「倫理教育」ではダメなワケ

こうした中、セキュリティ業界が若者に技術を教えるという行為には、想像以上の重さがある。門戸を開く以上、手法や知識だけを渡して終わりにはできない。どこまでが許され、どこが越えてはならない一線なのか。その判断を1人で背負わせない覚悟が、教える側には求められる。

私はその点で、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「セキュリティ・キャンプ」の取り組みは示唆的だと思っている。

セキュリティ・キャンプは、将来のサイバーセキュリティ人材を育てることを目的とした若年層向けの人材育成プログラムで、20年以上前の初回開催時から一貫して倫理教育を重視してきた。内容は単に「法律を守りましょう」という話にとどまらず、技術力を持つ者だからこそ、社会からどう見られるのか、どんな規範を背負うことになるのかを現職の警察官や検事、弁護士といった立場の人間が真正面から語る。

この法律と倫理の講義を受講しないと次の専門的な技術講義に進めないようになっており、これから学ぶ技術は社会や他人に損害を与える力が含まれていることを最初に自覚させる設計になっている。どの行為が犯罪に当たるのか、自分が犯罪者にならないためにはどうすればよいのか。さらに、警察は実際に見ている、追って捕まえている、という現実も隠さずに伝える。

例えば、ハッキングのアルバイトに巧妙に勧誘された例や、軽い気持ちで作った悪性サイトが検挙につながった例も紹介される。共通しているのは、「少し試しただけ」「頼まれただけ」という感覚から後戻りできない状態に踏み込んでしまった点だ。若者に効く形で届けるためには、抽象論ではなく具体的な事例を細部まで語り、善悪ではなく結果を見せることが大切だ。

義務教育ではネットリテラシーの授業もあるが、その多くがトラブルに巻き込まれないようにといった被害者の目線にとどまっていることが多い。最も悪いはずの加害者側が罰せられている実例が見えないと、対策しなかった被害者側が悪い、という誤ったイメージだけを植え付けてしまう。

被害に遭わないための教育だけでなく、自分が加害者の立場になりうることを、実際にあった事例を結果まで含めて示し、踏みとどまるべき一線を意識させる必要がある。

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