「未成年のサイバー犯罪」背景に3つの格差、倫理教育で闇落ち防ぐには? 「ホワイトハッカーに転身させろ」で解決しない訳
セキュリティ・キャンプでは、誰が困るのか、どこまで追われるのか、どんな償いが必要で人生の時間が失われるのかまで具体的に想像させる。さらに警察や法曹のキャリアの話、仕事の裏側といった雑談も交えることで、彼らが敵ではなく、同じ社会の側にいる大人だと伝える。この距離感も大事だ。
最後には、「法廷の場で再会することがないように」、という言葉を冗談抜きで投げかける。その一言の重さは、参加者の胸に確実に残る。さらに、必ず「迷ったら相談してほしい」という言葉を添え、一線を越える手前で立ち止まれる場所を示すことも大切にしている。
一線を越えないために必要な「身近な相談先」
倫理教育と同時に身近な相談先を用意することは、未成年のサイバー犯罪を防ぐための重要なポイントとなる。怪しい誘いを受けたとき、断っても大丈夫なのかわからない、周りに相談できる人がいない、間違いそうになったときに止めてくれる人がいない――そうした孤立が、若者を誤った方向に押し出すことは少なくない。判断を1人で抱え込ませないようにすることが大切だ。
今はネットやAIで興味があれば自ら学べる時代だ。気づいたら学校内で一番詳しくなってしまい、身近に相談先が存在しないケースも多い。これ以上はやってよいことなのか、駄目なことなのか、それを指導してくれる立場の人が必要だ。
そのため、セキュリティ・キャンプでは、コミュニティーの形成を大切にしている。参加者や修了生だけでなく、チューター、講師、運営を含めた大きなつながりを意識的に作っており、技術の話だけでなく、悩みや違和感を共有できる関係が長く続くことを重視している。
さらに、修了生が活躍できる場も用意している。修了後、チューターや講師、運営として関わる道が開かれ、自分の学んだ能力を次の世代のために使う経験を積める。技術が評価されるだけでなく、人の役に立つという実感を得られるのだ。この何層も重なるミルフィーユ的な人材育成構造が、承認を健全な方向へ流す役割を果たしている。
倫理を後付けにする教育は、もう通用しない。技術と倫理を同じ場所で育てる。そのような場所がないのであれば新しく作る。その覚悟を学校も業界も持てるかどうかが、これからの社会では問われていると思っている。
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