「このままでは子供の命を守れない…」阪大小児外科医が語る現場のリアル――少子化で起こる小児医療崩壊の波に打ち勝つ"次の一手"とは
多くの病院が経営難に苦しむなか、小児外科が扱う一部の病気は、診療報酬の点数が高めだ。貴重な収入源となっているため、簡単に手放せないというのだ。
集約化といえば、わが国には国立成育医療研究センターや、各都道府県にあるこども病院(小児医療センター)がある。ここを拠点とすればいいのではないか、とも思うのだが、「医療が高度化するなかで、成人の外科との連携が必須となる症例も多い」(渡邊さん)ため、これもまた難しいという。
もう1つ、小児外科の診療を危うくする要素が「働き方改革」だ。
医師の長時間労働が問題視され、勤務時間の短縮が進められている。そうすると今度は医師として十分な研鑽を積む時間が取りづらい。これは小児外科というより、外科全体の問題となっている。
「昔は、指導医の背中を見て学ぶのが一般的でしたし、私自身もそうやって学んできました」と渡邊さん。外科医は症例数を重ねるほど腕は上がる。それがしにくくなったことを教育者でもある立場から嘆く。
課題解決のためにAIを利用
一方で、こうした少子化や働き方改革で生じる小児外科の問題について、渡邊さんは「AIやICT(情報通信技術)によって解消できる可能性がある」と期待を寄せる。
子どもの手術の場合、体の大きさや病気の背景だけでなく手術を必要とする病態や解剖もさまざまで、大人の手術のように標準化しにくい。だからこそ経験が必要になるが、それをAIやICTで賄うという。
「現在も手術動画はありますが、数が膨大すぎて検索に非常に手間がかかってしまう。AIが手術の状況や場面を分析・解析し、必要に応じて画像を選択してくれる仕組みを構築すれば、効率よく学習できるようになります」(渡邊さん)
しかも、こうした動画と既存の手術シミュレーターを組み合わせることができれば、より高度な学びが可能になる。
このほか、患者の検査画像と過去の手術動画を照らし合わせて、より最適な手術法を解析したり、それを麻酔科医や看護師などとチームで共有できたりすれば、手術の安全性も格段に向上すると、渡邊さんは考える。
手術を受ける子どもや家族への説明も、AIを使ってスマホのように双方向でやりとりができるようになれば、わからないことを何度でも聞き直せる。気が動転していて聞き逃したときにも有用だ。
「今は時間をかけて、手描きの絵や平易な言葉を使って説明していますが、AIで作成したアニメ動画を使って、何のために、どういう治療を行うのかを説明できれば、お子さんの理解も深まると思います。2~3歳でも、子どもは納得しないと治療に協力してくれないですから」と渡邊さん。





















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