「このままでは子供の命を守れない…」阪大小児外科医が語る現場のリアル――少子化で起こる小児医療崩壊の波に打ち勝つ"次の一手"とは

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多いのは鼠径(そけい)ヘルニアや停留精巣、虫垂炎などの手術だが、先天異常や先天性疾患の手術、小児がん手術、臓器移植といった難しい手術も行われている。

渡邊さんは、小児外科の技術をアメリカ留学で身に付けたあと、2019年に同院へ。この間、小児外科医として多いときで年間約250件の手術を行った。その功績が認められ、2025年に全国でも数少ない女性の外科学講座の主任教授になった。

小児医療について、「“子どもは大人のミニチュアではない”という言葉がありますが、子どもの体は小さいだけでなく、発達段階ならではの特殊性がある」と語る。

近年、手術はどんどん高度化している。小児外科においても、内視鏡や腹腔鏡を使った手術は当たり前になり、ロボット手術も導入され始めた。さらに、同科では国内で初となる「胎児手術」が臨床試験としてスタートしている。

「例えば、背中の外に脊髄が出てしまう難病『脊髄髄膜瘤(せきずいずいまくりゅう)』の胎児に対して、お母さんの子宮を切開して胎児の手術を行い、胎児を子宮内に戻して妊娠を継続させる治療を行っています」(渡邊さん)

小児外科ならではの問題

ところで、冒頭で述べたような小児外科の問題は、昨今言われるような医師不足や病院の偏在、直美問題などによる医療崩壊の様相と少し違っている。実際、外科医は徐々に減少している一方で、「小児外科医は減っていない」と渡邊さんは言う。

では、なぜ小児外科の今後について危機感を抱いているのだろうか。

最大の理由は、少子化だ。子どもが減っているのにもかかわらず、小児外科医の数・小児外科施設数はそのまま。そうなれば当然ながら、1つの病院で診る症例数は減る。

現在、大阪大学医学部附属病院小児成育外科の年間の症例数は、500〜550症例。他施設の平均は280症例くらいだ。

「症例数が減ると、将来の小児外科を担っていく若手医師が稀な病気の手術や治療を経験することができません。その結果、次の世代の子どもたちに、これまでと同じ質の医療を提供できなくなるおそれがあります」(渡邊さん)

これを解決するには、小児外科を国内のいくつかの場所に集約化させて、そこで患者を診ればいいのだが、なかなか難しい。

その背景にあるのが、病院経営の問題だ。

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