「寒さで人を殺す」ロシアの冷酷。エネルギー施設攻撃に地下鉄駅内で夜を過ごす、軍事侵攻4年"キーウ最悪の冬"の惨状

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旧ソ連時代に建てられた古い集合住宅で、娘と孫の3人で生活するタマラさん(74)は「一番寒い季節に電気も暖房も水もなくて、うんと厚着をして毛布にくるまって数日間過ごしたけれど、4歳の孫娘はかわいそうに風邪をひいてしまってね」。義理の息子は出征中とのことで、この家族に限らず女性と子ども、高齢者だけで暮らす世帯が必然的に多くなる。

発電機が緊急配備されたものの、今も電気が24時間使えるわけではなく、日によって昼間の数時間ほど停電になる。タマラさんは12階で暮らしているが、高齢にもかかわらずエレベーターを使わず、買い物や孫娘の幼稚園の送り迎えで1日何度も階段を上り下りする。「途中で急に止まって閉じ込められた住民がいてね。怖くてとても乗れないわ」と言いながら、懐中電灯と買い物袋を手に薄暗い階段を上っていった。

集合住宅の薄暗い階段を上るタマラさん(2月17日撮影:中坪央暁)

室内にテント、レンガを加熱してカイロに

「軍事侵攻が始まって以来、この冬が一番苦しい。誰もが攻撃と停電の二重のストレスで疲れ切っています」。アーシャさん(37)、アレクシーさん(36)のカップルは不安げな表情で話した。

キーウ中央駅や政府関連施設が建ち並ぶ地区に住んでいるため、夜間攻撃の頻度は高い。現在も1日の半分以上は計画停電になるが、「これでもずいぶん楽になったんです。とにかく大変だったのは1月前半。地域全体の電気と暖房、水道が完全に止まってしまって」。

寒さもさることながら「顔を洗う水がなく、トイレも流せないので、発電機と給水があるカフェに行って使わせてもらいました。友人が飲料水を届けてくれたので、電気が通じた時に大急ぎでお湯を沸かしてポットで保温し、食事はインスタント麺ばかり…」とアーシャさん。不完全ながら何とか復旧したのは1週間後だった。

「この冬が一番苦しい」と話すアーシャさんとアレクシーさん (2月16日撮影:中坪央暁)

キーウ市民はそれぞれに工夫して困難に立ち向かっている。夫が軍務に就き、ひとりで家を守るタイスさん(32)は、台所のガス台でレンガを熱して「2~3時間は持つ」という“カイロ”を作り、部屋にテントを張って飼い猫と一緒に寝ている。

日常生活に加えて、在宅で続けるデジタルアーティストの仕事にも電気が欠かせないため、「貯金をはたいて室内用蓄電池と小型バッテリーを購入し、電気が短時間戻った時に蓄電したり、近所の給電スポットを利用したりしています」。

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