日本の食料事情改善だけが論点ではない、個人の生存戦略としての「農業」に可能性はあるか? 「農業で稼ぐ」夢と現実

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あとは結局、自分が農業という仕事をどれだけ好きになれるかです。私たちの支援で就農したある女性は、「就農のため郊外に引っ越したら、毎朝、鳥の声を聞くのが楽しみになった」と話していました。農業は単純作業が多く、自然相手で先が読みづらい。それでも飽きたり懲りたりせずに自然の中で働くことを楽しめる人だったら、農業は向いていると思いますよ。

「東京で就農」が意外と「かなりアリ」の理由

東京の就農という点に絞ると、農地がとても少ないエリアで苦労するものの、そこをクリアできれば、東京で就農するのは、実はかなり有力な選択肢と言えます。なぜなら、東京は作物を「つくっている人」よりも「買っている人」のほうが圧倒的に多いからです。

いくら流通網が発達しているといっても、さすがに「今朝、穫れたて」の野菜を地方から東京に運んでくるのは困難です。つまり鮮度を求める人は必然的に地元でつくられたものを選ぶことになり、しかも東京では野菜をつくっている人の割合が非常に低いため、売れやすいのです。

東京の人たちが地元産の野菜を選ぶ理由には、鮮度だけでなく「地元愛」もあるのかもしれません。これは私個人の感覚なのですが、東京在住者ほど畑のある田園風景を好み、東京産の作物に対する親近感も強い人が多いと感じます。

地方の農家の場合は、収穫して農協に運んでしまえば、あとは農協が売ってくれます。東京にはそういう仕組みがないため、東京で就農したら自分で販路を開拓しなくてはいけません。それでもなお上記のような理由から、東京で就農するのは意外と大アリと言えるのです。

もちろんネット販売も1つの選択肢です。あるいは、自分で足を運んで交渉する必要はありますが、学校給食や産地直売所などの固定取引先をつくってしまえば、むしろ農協を経由して販売するよりも確実に売り上げが立ち、体力的にも楽という利点もあります。

私たちのコミュニティで就農した人たちも、いろいろと試して自分に一番合った売り方を確立しています。すでにファンがついているとか、評判を聞きつけたレストランシェフが直に訪ねてきて取引が決まるといったケースも少なくありません。立川、八王子、青梅……こういった東京ローカルの強さを感じますね。

(構成/福島結実子)

松澤 龍人 東京都農業会議事務局次長兼業務部長

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まつざわ りゅうと / Ryuto Matsuzawa

1968年生まれ。1992年より東京都農業会議に勤務。1994年から現在まで農地関係制度を担当。2006年から新規就農相談の担当となり、2009年に東京都内初の新規就農者を誕生させ、2012年には東京都内の新規就農者等で組織の仕掛人となり東京NEO-FARMERS!を結成。これまで規就農の相談に対応したのは累計1,000人を超える。

農地専門相談員として、多数の講演会・研修会の講師も務める。

共著書籍として、『都市農業・都市農地の新たな展望』(農政調査委員会、2021年)、『これで守れる都市農業・農地 : 生産緑地と相続税猶予制度変更のポイント』(農山漁村文化協会、2019年)、『都市農業必携ガイド : 市民農園・新規就農・企業参入で農のある都市づくり』(農山漁村文化協会、2016年)など、多数。

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