
あるメーカーの開発部長を務める40代のAさんのもとに1通の封書が届いたのは、3年半ほど前のことだ。差出人は「株式会社プロフェッショナルバンク」。聞き覚えのない社名に「何かの案内だろう」と、Aさんは封を開けた。
「この度は突然ご連絡を差し上げまして大変恐縮でございます。恐らく現時点では転職の意思もお持ちでない貴殿に対し、何故このようなコンタクトをさせていただいたのか…」
そんな一文で始まる手紙が同封されていた。読み進めていくうちに、Aさんはどうやら自分がヘッドハンティングの対象になっているらしいと気がついた。
どこかの会社が自分を必要としていると思えば、悪い気はしなかった。しかしAさんは今の会社で評価をされて仕事にやりがいを感じており、転職サイトに登録したこともない。「いったいどこで私のことを知ったのだろう」。そう考えながらAさんは手紙をしまった。
この時、プロフェッショナルバンクにヘッドハンティングを依頼したのは、新規事業を構想していたB社だ。
B社を取り巻く競争環境は激しさを増すばかり。既存事業だけで継続的な成長戦略を描くことは難しい。そこで、新規事業への挑戦を模索していたのだが、狙った事業領域の知見や経験を持つ人材が社内に不足している。何よりも、スピードが事業の成否を左右する中にあって、社内の人材が育つのを待ってはいられない。ならば、新規事業の核となる専門的な知見を持つ開発責任者を外部から獲得するほかはない。B社では従来から付き合いのある複数の登録型人材紹介会社に依頼したが、求める技術がニッチすぎるのか、半年かけても求める人材とは会えなかった。そこでB社の経営陣は、ヘッドハンティングでの採用を決断した。
ピンポイントで求める人材を探し出す
ヘッドハンティングと言うと、あらかじめ指名された人物を引き抜くというイメージを想起しがちだ。しかしプロフェッショナルバンクは、不特定多数の中からクライアントの要望に適した人物をピンポイントで探し出すフルサーチ型の手法を取っている。ターゲットは30代後半から40代のミドルクラスがボリュームゾーンだ。不特定多数の中から徹底的に探し出すフルサーチ型は手間も時間もかかる。が、企業が求めるスペックに近い人材を選び出せる可能性も大きい。
プロフェッショナルバンクのリサーチャーたちは、B社が求める人材が在職していると思われる企業をピックアップ。企業のホームページや特許情報、業界誌や専門誌などの記事といった公開情報はもとより、対象業界の外部協力者からの評判など、さまざまな方法から得られた情報を統合して人材選定を進めていく。
こうして、約200人をリストアップ。さらに条件と照らし合わせながら40人ほどに第1次候補を絞り込み、B社と協議をしたうえでコンタクトを取りたい人材の厳選と優先順位をつけていった。そして最終的に残った十数名に、プロフェッショナルバンクのコンサルタントがアプローチすることになった。
この時、対象となる人物へのファーストコンタクトは必ずメールか手紙。いきなり電話をするようなことはしない。Aさんが受け取った手紙が、それであった。候補者たちは皆、高く評価されている有能な人材ばかり。しかも転職願望がないから、ヘッドハンティングの候補になっていると知らされても、すぐに反応する人は少ない。であるがゆえにプロフェッショナルバンクでは候補者との面会率を高めるため、独自のコンタクトノウハウを築いている。
フックポイントを突き止めろ
プロフェッショナルバンクのコンサルタントと会うことを了承したのは4人であった。皆、転職願望がないのに、なぜ会うことにしたのか。
「優秀な方々だけに、自分の市場価値を把握したいと思われる方が少なくありません。また、どこかの企業が自分を求めていると聞いて、新たな環境で挑戦がしたいといった潜在的な意識に気がつくことも多いのです」と、プロフェッショナルバンクのコンサルタントは語る。ある意識調査によるとビジネスマンの69%は潜在的に転職願望を持っていると考えられている。
4人の候補者と面談したプロフェッショナルバンクは、候補者の実績、キャリア、志向性を踏まえたコンサルタントの所見を網羅した報告書をB社に提出し、相談の後、B社は3人と面談することにした。そして、最終的にAさんを含めた3人にB社の社名が明かされた。
引き合わせの場では、B社から事業展開の構想や、業務のミッションなどを説明。一方、候補者は移籍後の業務の内容などを確認し、お互いの意識のすり合わせを図っていく。そして面談を重ねながら、ミッション、ポジション、待遇、権限、将来のキャリアステップなどを詰めていくのだ。
コンサルタントにとっていちばん大事なのは、それぞれの候補者が最終的に転職を決断するとしたら、何が決め手になるかを探り出すこと。コンサルタントは、それを「フックポイント」と呼んでいる。

「フックポイントには二つのタイプがあります。一つは、もっと新しいことに挑戦したい、もっと自分の可能性を試してみたいというポジティブリーズン。それに対して、自分が正当に評価されていない、今いる会社の成長性に疑問があるといった現状に対する不満。それが、ネガティブリーズンです。もちろん年収条件も重要なポイントですが、日系企業で育った優秀な人材は目先の給与だけでは動きません。やりがい、成長感、達成感のバランスで決断されるのです」
コンサルタントが果たした役割
Aさんのフックポイントは、まさにポジティブリーズンであった。コンサルタントは語る。
「Aさんからは、事業を成功させるために必要な設備や人員体制についてアドバイスがあり、B社のトップも新たな設備投資と人員配置を約束しました。トップをはじめとしたB社の新規事業に対する熱意も通じ、Aさんも、これは開発者としてもビジネスパーソンとしてもまたとない大きなチャンスだと判断されたようです。こうしたやりとりをつなぐこともコンサルタントの大切な仕事の一つです」
現在、AさんはB社の新規事業部門責任者として、新商品開発プロジェクトを牽引。開発は順調に運び、オンスケジュールでリリースできる見込みだ。Aさんというプロフェッショナル人材を獲得することで、B社は新分野進出への橋頭堡を築くことができたのである。
企業はグローバル化の波にさらされ、激しい変化に見舞われている。そうした環境に対応し、持続的な成長を遂げていくためには、事業や開発を牽引し、自ら成長エンジンとなれるプロフェッショナル人材が必要だ。実際、そうした人材を確保するためにも、従来の採用手法や慣習に拘泥するのではなく、まったく新しい攻めのヘッドハンティングを活用している企業が増えている。プロフェッショナル人材をいかに確保するのか。企業の盛衰はそこに大きなポイントがあるからだ。

インパクトプレーヤーのヘッドハンティングで
企業の事業推進をサポートする
―2004年の設立ですが、社名の由来を聞かせてください。
兒玉 彰
兒玉 当時はビジネスパーソンに対し、プロフェッショナルという言い方はあまりしていませんでした。しかし事業の成長戦略を推進するようなプロフェッショナル人材(=インパクトプレーヤー)の不足に企業が困っていることは、長年人材にかかわる仕事をしてきて実感していました。今の時代、必要な人材がそろうまでに時間がかかると、商機を逸してしまいます。そういう観点であらためて見ると、日本のビジネス界にはプロフェッショナル人材の活躍の場を広げるインフラが欠けていることに気がつき、『インパクトプレーヤー』に特化した紹介会社を立ち上げたのです。
―フルサーチ型という手法を取っているのはなぜですか。
兒玉 企業が求める有能な人材は、今いる会社でも高く評価されているようなエース級のプロフェッショナル人材です。そうであるなら、転職を希望して転職ポータルや登録型人材紹介会社に登録している人材ではなく、現在活躍している人材の中からこそ選ぶべきだと考えています。
―御社の優位性はどこにありますか。
兒玉 二つ挙げることができるでしょう。まずは、サーチ力。エグゼクティブ層と比較し、ミドルクラスの情報量は多くはありません。しかも、転職市場に顕在化していない人材の中から有能な人を見つけるのですから、ここが大きなノウハウと自負しています。そして、転職希望がない方を転籍に結び付ける独自のノウハウです。確実なコンタクトで候補者に振り向いていただく。候補者ご自身でさえ自覚していない願望などを、コンサルタントから気づきを与え、まとめ・調整していくといった真のコンサル力が強みになっています。実際、お客様からのご依頼に対する成功率が90.1%、リピート率が62.9%であることが何よりもよく物語っていると思います。プロフェッショナル人材の必要性についての認識の広がりとともに、当社に対するご依頼は5 年で3.5倍のペースで伸び続けています。
―どのようなニーズが多いのですか。
兒玉 現在の中途採用の市場においては、ポテンシャル採用ではなく、即戦力人材が強く求められています。ゆえに、転職サービスなどに登録されていない幅広い層から欲しい人材を採用したいというご要望が多くなっています。また、ターゲットとする領域がニッチすぎる場合など、フルサーチ型に対する期待が大きいとも感じています。
職種としては技術者が最も多く、その次は特定分野の業界で実績のある営業職が多くなっており、在職者の異動などを伴うためにオープンな採用活動は控えたいといったケースもあります。経営の根幹にかかわるケースが多いため人事部ではなく、経営者や事業部門の責任者、経営企画部門などから直接ご依頼をいただくことのほうがむしろ多いですね。経営者の方は、M&Aと同じような考え方で当社のサービスをご利用されています。M&Aは、自社にない経営資源、必要な経営資源を外部に求めて企業や事業部門を買うわけですが、『インパクトプレーヤー』のヘッドハンティングも同じように自社になかったり不足していたりする人的資源を外部に求めるということです。
その意味で言えば、経営戦略上の重要な施策ということになり、だからこそ経営者や事業部門のトップ、経営企画部門からのご依頼が多いのでしょう。