イスラエルとイランの戦争はさらなる戦争を招く、小事から大事へ、過去の対戦の歴史を振り返り世界大戦を食い止めよ

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実際、「専門家」といわれる学者の多くもそうした偏見の中に生きている。イランとイスラエルの経済統計や軍事統計を見ても、それだけではその国の強さなどわからない。GDPはイスラエルのほうが1000億ドル以上、上である。確かに1人当たりにすると10倍以上であり、イスラエルは豊かである。

しかし、イスラエルが1000万足らずの人口であるのに対し、イランは9000万であり、その産業は鉄工業を含めさまざまな分野にわたる。一方イスラエルは、ハイテク、情報、医薬品などに特化していて、それ以外は弱い。

戦争は「総力戦」という事実を注視せよ

戦争が総力戦だとすれば、農業や工業のなどの多様性は重要である。また地理的条件も重要である。国境を接していない国とどう戦うか。山と砂漠に囲まれた国とどう戦うか。問題は簡単ではない。イスラエルは西欧の力を得ることができる点で優位であると見られがちだが、同じように西欧の支援を受けたウクライナはなぜ苦戦を強いられているのか。

西欧はもっと非西欧の国々のことを真摯に学ばなければならないだろう。独裁国、人権無視の国、宗教国家、悪の枢軸などとレッテルを貼ってみたところで、それで状況が有利に変わるものではない。

イランをはじめ、非西欧世界は、これまでのように西欧に従属する小さなアリのような存在ではないのだ。アリだと思っていたら、そこにライオンがいることに気づくことになるかもしれない。次のことばを最後に引用しておく。

〈君には私はアリのように見えるかもしれないが、いつかはライオンになってみせるぞ。〉(マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』『マルクス=エンゲルス全集』第8巻、170ページ)
的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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