こうした劣等感を払拭させた最初の衝撃が日露戦争による日本の勝利であったのだが、一度ついた劣等感を消し去るのは容易なことではない。イスラエル政府が攻撃の被害について押し黙るなか、ミサイル攻撃を受けるテルアビブの様子を撮影した動画があちこちに拡散していった。
すでにミサイル迎撃網は、大量のミサイル攻撃、クラスター爆弾のような拡散型ミサイル攻撃には弱いということが、ロシアのキエフ攻撃でわかっていたのだが、ロシアではなくイランがそれほどまでに多様なミサイルを多く所有していたことに人々は驚いたはずだ。
非西欧社会の情報が入らない西欧社会
西欧社会では、非西欧社会の情報はあまり入ってこない。もっといえば、非西欧社会への関心が薄いということだ。アメリカの政治コメンテーターであるタッカー・カールソンが、共和党上院議員テッド・クルーズにイラン攻撃について聞いていたが、クルーズがイランの人口さえも知らないことに驚いていた。しかし、これはクルーズだけの例外ではないのだ。
例えばアメリカの重要な外交雑誌『フォーリン・アフェアーズ』にイスラエルのイラン攻撃直後に出たアフション・オストヴァル(Afshon Ostovar)の「いかにイランは失ったのか―テヘランの強硬路線論者は数十年の資本を無駄にし、その抑止力を破壊した」(Foreign Affairs、June 18、2025年)などは、その典型だ。
この論文の趣旨はこうだ。イランの支配体制は、1980年の戦争以来ますます弱くなり、崩壊の危険にさらされていて、一方ここ数十年で構築されたイスラエルのアイアン・ドームは鉄壁の守りを確保し、イランの攻撃を無力化しているのだというのである。イランの数十年にわたる軍備強化は結局無駄なことだったというのだ。
こうした議論は、実はウクライナ戦争が始まった当初のロシアに対してもいわれたことである。ロシアのプーチン体制はすぐに崩壊する。経済制裁によってロシア経済は崩壊し、ロシアの財政は破綻し、ロシアの軍事的敗北は決定的だと主張されたのである。
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