イスラエルとイランの戦争はさらなる戦争を招く、小事から大事へ、過去の対戦の歴史を振り返り世界大戦を食い止めよ

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その境界地域がウクライナであり、中東であるのだが、これらの地域は昔のように脆弱で無抵抗な地域ではないということだ。いやその生産力や軍事力においてすでに先進国を凌駕している国もある。

アメリカやG7が、力で世界をねじ伏せてきた時代はすでに終わっている。 

イランとイスラエルの対立

誇り高きイラン、人類最初の帝国として出現したアケメネス朝ペルシア(紀元前550年~同330年)の伝統を受け継ぐイランは、数ある文明の中心地の中でも、その気位において他を圧倒する。

確かに19世紀から20世紀にかけてイギリスやロシアの半植民地になりはしたが、けっして本当の植民地になることなく、現在まで至っている。インド、中国、トルコとならぶ非西欧の中心国である。

1979年のホメイニによるイラン革命以来、数々の非難を受け、西欧の発する経済制裁に耐えてきた国である。わが国との関係も深い。

それゆえイスラエルといえども、アメリカといえども簡単に屈服させられる相手ではない。イスラエルから攻撃を受けても、簡単に抗戦せず、じっと我慢する強靱な精神ももちあわせている。

しかし2025年6月13日のイスラエルの攻撃に対し、これまでの我慢をくつがえすかのように連日連夜イスラエルへのミサイルとドローン攻撃を行った。

とりわけ驚いたことは、イスラエルの誇る迎撃システム、アイアン・ドーム(鉄の屋根)が崩壊したことだ。このアイアン・ドーム崩壊はイスラエルの防衛網がほころびたというだけではなく、これまで中東を苦しめてきた西欧社会の神話、「西欧はけっして非西欧などに攻撃されることはない」という神話を完全に崩壊させたことに意味がある。

アジア・アフリカを覆う西欧文明に対する劣等感を、インド出身の歴史学者、ジャーナリストであるヴィジャイ・プラシャド(1967年~)の『褐色の世界史:第三世界とはなにか』(粟飯原文子訳、水声社、2013年)は、イランの作家であり社会思想家だったジャラール・アーレ・マフマド(1923~1969年)の言葉として次のように描いている。

〈つまり東洋の人々が「西洋」に劣等意識を抱いているという問題である。圧倒的な軍事力と工業力を誇る西洋は誇大な幻想を生み出す。歴史をつくるのは西洋であり、西洋の言動だけが重要であると考えられる一方、東洋にいるそのほかの人々は永久に麻痺状態にあり、畏怖の感情を抱き続ける。アーレ・マフマドが知らせたかったのはこのことである。〉(107ページ)
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