マルクスは、普仏戦争が起こる10年前、ドイツとフランスの対立を代理戦争という観点から予測していた。
19世紀の状況に似た現在
この普仏戦争でドイツはロシアにけしかけられで代理戦争を行っているのだという。戦争を実行して多くの犠牲者を出すのはドイツで、ロシアは無傷で勝利の利益を得るだろうというのだ。この話を現在に移せば、ロシアはNATO(北大西洋条約機構)で、ドイツはウクライナということになるだろう。
しかしながら、普仏戦争と違ってウクライナの勝利は遠く、NATOは勝利の利益を得るのではなく、敗北の損益を蒙(こうむ)ることになるかもしれない。
これはたんなる類推だが、起こっている事態は19世紀とよく似ている。1つの戦争が次の戦争を引き起こし、連鎖的にどんどん戦争が拡大し、最終的には世界大戦という形で決着をむかえるということである。
こんなことは考えたくもないが、個々の戦争が世界の大きな対立構造の中で生まれている以上、つまり根本的問題である世界の対立構造が解決されないかぎり、いずれ戦争が起こるのは避けられないのかもしれない。
では対立構造とは何かという問題がある。私は、それは弱体化した先進資本主義国と、勃興する後進資本主義国との対立、もっと平たく言えば、G7(主要先進7カ国)を中心とした西欧の「帝国主義国」と、「旧植民地、旧半植民地だった」非西欧との対立だと考えている。
衰退する地域と発展する地域との経済的戦争が、いまや潰しあいの戦争へと発展しつつあるともいえる。19世紀の戦争が、アジア・アフリカへの支配を強める帝国主義的戦略をとった先進資本主義同士の戦争であったとすれば、21世紀は「帝国主義連合」であるG7と、「旧植民地と旧半植民地連合」との覇権闘争であるといえる。
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