「2018年まで母が1人で住んでいましたが、4月に特老(特別養護老人ホーム)に入ってからはずっと空き家でした。母は病気で入退院を繰り返していましたが、足腰が弱くなってきていることから施設に入ったほうがいいと勧められました。2階まで上がらないと洗濯物が干せませんし、段差もありますし……」


死者14人を出した台風で家が壊れた
男性は高校を卒業した後、静岡県の浜松市で就職し、すぐに実家を出た。そのまま浜松で家庭を持ったため、大阪の実家には長らく父と母が2人で暮らしていた。少し年上の兄が1人いたが、37歳の若さで他界。その半年後に父も他界し、それから10年以上、実家には母親が1人で暮らしていた。

母が施設に入った約4カ月後、「平成30年台風21号」が日本に上陸した。
この台風のため、関西国際空港は高潮によって滑走路やターミナルビルが浸水し、停電などで閉鎖。さらに空港連絡橋にタンカーが衝突し、連絡橋が破損するなどの被害が出た。この台風による死者は14人、負傷者は980人と、近畿地方を中心に甚大な被害をもたらしたのだった。
「9月頭に実家の様子を見に行くと、1階の畳はすでにカビだらけでした。しかし、私も浜松に住んでいるものですから、年に2回、窓を開けに来ることしかできませんでした。妻にも“早く片付けないと”と言われていました」(男性)
窓を開けに帰るたびに、実家のカビはどんどん増殖していく。男性自身も「早く片付けなければ」と頭ではわかっているものの、ズルズルと先延ばしにしてしまった。

無料会員登録はこちら
ログインはこちら