「歓楽街のど真ん中」「最安値で2530円」 串カツ田中が"高級トンカツ店"を密かに始動。味はいいけど、上手くいくか疑問に思えたワケ

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五反田駅から「厚とん」に向かうまでには「かつや」があったが、そこは大行列だった。ちなみにかつやの「ロースカツ定食」は税込869円。厚とんのほぼ3分の1ぐらいだ。

物価上昇が厳しく懐事情も厳しい現在、会社員はそちらに向かうだろう。「厚とん」が「かつや」の3倍美味しければ、話も変わってくるのかもしれないが、「かつや」は十分に美味いわけで……。

かつや
同じ日、同じ時間帯で大行列だった「かつや」。まあ、こちらに行くよな……(筆者撮影)

味について筆者は評する立場にはないが、食べ方として推奨されている「カツ丼」は、正直「高級トンカツ店」を押し出すには似つかわしくないジャンキーな味だと思う。美味しいのだが、「高級店」という感じはしない。

総じて、メニューについては値段も味もどこか「中途半端」な感じが否めない。

「串カツ田中」イメージをどう脱却するかがカギ

3つ目は、2つ目に関連することだが、「串カツ田中のトンカツ屋」というイメージの強さが尾を引いていることだ。「串カツ田中のトンカツ屋」は引きのある言葉だが、正直それがこの店のイメージを曖昧にさせていると思う。

串カツ田中といえば、どうしても「安い居酒屋」のイメージがある。「高級店」とか「落ち着いて食事できる店」のイメージはない。そうなると、どうしても消費者の頭の中には「串カツ田中」のイメージがチラつき、まずトンカツの値段に驚いてしまうし、店内が落ち着きがあるといっても「なんだかガヤガヤしてそう」「だったらもう少しいいトンカツ屋に行こうかな」と思ってしまう。

良いサービスや商品を出していても「串カツ田中」がチラつくと、どこかもったいない。

メニュー
メニューには色々なこだわりが書いてあるが……(筆者撮影)
ニセコ化するニッポン
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例えば、スシローの運営元である「株式会社FOOD & LIFE COMPANIES」が展開する居酒屋「杉玉」は、当初スシローと同じ運営元であることを隠して軌道に乗せている。変に「スシロー」イメージに引っ張られずに、その店のポテンシャルを客に体感してもらい、順調に成長したわけだ。

厚とんはすでに串カツ田中が運営していることを発表しているからどうしようもないが、その辺りのイメージ戦略の舵取りは今後強く求められるだろう。

やや辛口で上記3点を指摘したが、まだ厚とんはオープンしたばかり。これから徐々にメニューやPRなどを工夫してそのイメージを作っていくはずだ。

串カツだけに頼る企業ではいられないはずだから、業態を拡大していくことは必然の流れ。その中でどのように厚とんが位置付いていくのか(あるいは位置付けることに失敗してしまうのか)、要チェックである。

【もっと読む】「味が値段に見合ってない」「さすがに高い」との声もあるが…。ココイチ「驚愕の3280円カレー」が示す“残酷な現実” では、客離れが進むCoCo壱番屋の、値上げの実態について、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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