「余計に少子化進むだろ」「こども家庭庁をなくせば財源確保できる」の声も…。来年4月から導入、“独身税”が日本崩壊を加速させる理由

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炎上する理由は簡単だ。そもそもこれまで行われてきた施策の大半が子育て支援であり、少子化の根本の問題である経済状況にほとんど手が付けられていないからだ。

急激な少子化の進行には、「失われた30年」における実質賃金の低迷が関係しており、それが結婚の減少→出産の減少→子どもの減少という負のスパイラルにつながっている。

経済学者の藤波匠は、国内外のさまざまなデータを示したうえで、「日本では、バブル崩壊以降の長期にわたる低成長が若い世代の暮らしぶりを悪化させ、少子化に拍車をかけたと考えるべき」と指摘し、現金給付や社会保障ですべてを解決することは難しく、適度な経済成長と安定的な賃金の上昇が何よりも重要とした(『なぜ少子化は止められないのか』日本経済新聞出版社)。

そのうえで「30年にわたって低成長に有効な手を打てなかった歴代政権や、抑制的な賃金水準で良しとしてきた国内事業者の責任は免れない」「人手不足であれば賃金が上昇するという当たり前のことを、官民が否定し続けてきたことに主因がある」と厳しい見方をしている。

つまり、子育て環境とか若者の意識とかが直接的な要因ではない。収入がないから結婚ができず、子どもも生めないという単純な話なのだ。

「収奪的な社会」に向かいつつある

『成長の臨界』(慶應義塾大学出版会)で、長期停滞の元凶が、収益を上げてもため込み、実質賃金の引き上げも人的資本投資にも消極的な大企業であることを明らかにした経済学者の河野龍太郎は、日本の場合、実質賃金が上がらないのは生産性の問題ではないと主張した(以下、『日本経済の死角 収奪的システムを解き明かす』ちくま新書)。

河野は、四半世紀にわたって実質賃金がまったく上がっていない国は、近代以降、先進国では前例がないと述べ、「過去四半世紀、生産性が3割も改善しているにもかかわらず、実質賃金がまったく増加していない」「その結果、個人消費が低迷を続け、国内での売り上げが増えないために、企業は採算が取れず、国内の設備投資を抑えている」とそのカラクリを説明した。

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