「20万円の梅酒、90万円のウイスキーが人気」「毎日が戦争」インバウンドの最前線≪免税店≫で働く台湾人女性の“日本での暮らし”の本音

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限定品の酒はさらに高額だ。年間で千数百本しか生産されず、高品質なことで世界的に知られる山崎25年はなんと90万円。本数が限られているので抽選制だ。当選した人に買う権利が与えられるそうだが、この応募もワンサカ寄せられる。「ジャパン・ウイスキー」が国際的に評価を得ているのは誇らしい限りだが、インバウンド客の買いっぷりがうらやましくもなる話だ。

カスハラ、転売ヤー…困ったお客もやってくる

ほかに売れ筋といえば化粧品。

「SK-IIとか資生堂とか、日本のブランドですね。ラ・プレリー(スイスのスキンケアブランド)の1本1万〜2万円する化粧水をセットで買っていく方もいます」

海外旅行の楽しみは免税店での買い物というのは外国人も日本人も同じ(写真:筆者撮影)

それに和風の絵柄の入った魔法瓶、ひとつ10万円ほどする美顔器、ダイソンのドライヤー、日本の薬やサプリ……こうした品がばんばん売れていく。

まさにインバウンド最前線といった様子だが、接客業をしていれば困ったことも起きる。閉店時間間際になだれ込んでくる団体客はまだいいほうで、しんどいのはクレーマーの類だ。

ある常連の日本人女性は「いつも買っている口紅がない」と大騒ぎ。すでに生産が終わっている品なのだが納得せず、アリスさんたちスタッフに「ないわけがない」と厳しく迫ったのだとか。

また、免税店で購入できるのは6歳以上と決められているのだが、その年齢に満たない子供の名義で買い物をしようとする人もいる。酒などは、あまりの人気にひとり1本と購入数を限定している品もあるからだ。ある中国人にそれを伝えたところ、これまた納得せず「日本では、お客さまは神さまだろう」と抗弁されたそうな。

それに以前は、アリスさんが台湾人だと知ると「台湾は中国のものですよ」といきなり政治的な話を振ってくる中国人もいたそうだが「最近はそういう人は少なくなりました」という。

そして店にやってくるのは旅行者だけではない。業者、いわゆる「転売ヤー」も多い。

「中国人の業者はテリア(IQOS用のたばこ)、ベトナム人の業者は獺祭をたくさん買っていきますね」

限定品なのにたくさん買わせろと声を荒げるような中国人もいるのだそうだ。日本人の転売ヤーも来るが「お店のルールをちゃんと守ってくれますね」とアリスさん。

しかし、そもそも免税品の転売という行為そのものが「脱税」と指摘され、問題になっている。商品は海外で転売するケースもあれば、日本国内のオークションサイトやフリマサイト、中古品店などに流れていくこともある。

商品の中にはその場ではなく空港の出国後のロビーにある免税品カウンターで受け取るものもあり、つまり航空券を買って実際に日本を出国する必要があるわけだが、予約便に乗らず「急用で」などと言い訳をして出国を取り消して日本にまた入国して、転売家業に精を出す日本在住者もいる。

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