「最近、90代ドライバーの事故多くない?」「さっさと免許を返納しろ!」《“超高齢”ドライバーの事故》は本当に増えているのか?

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実際以上に「高齢ドライバーの事故が増えている」という印象を受けやすいもう1つの理由は、メディアの報道。基本的にテレビの報道・情報番組では、よくある交通事故はほとんど報じられません。

ネットニュースも含め、死亡事故でも被害の規模や過失の割合などが大きくなければあまり報じられないところがあります。

見る人の怒りを誘うような報道姿勢

なかでも最もテレビの視聴率やネットのPVにつながりやすいのが、高齢ドライバーの事故。その年齢を見出しにするだけで見る人を引きつけやすく、前述した99歳のドライバーが逆走したときは「大正生まれの」という記述が相次ぎました。

事故の内容も含め、見る人が「また高齢者かよ!」「さっさと免許を返納しろ!」などと怒りのスイッチを入れやすく、だからこそ数字につながりやすいのでしょう。

18日に報じられた「78歳運転するタクシーが掲揚ポールに衝突 養護教諭の女性の頭にポールぶつかり死亡」というネット記事がYahoo!ニューストピックスに選ばれ、多くの人々が怒りの声をあげたことからもそれがうかがえます。

ただ、テレビとネットの報道スタンスは同じではありません。

テレビは中高年層の視聴者が多いため、高齢ドライバーの事故に怒りの感情を抱かせるだけでなく、「他人事とは言い切れず思わず見てしまう」という心理を活用。そのため事故の加害者を断罪するだけでなく、他の高齢ドライバーにとって救いのある構成やコメントも目立ちます。

一方、ネットニュースを見る人はテレビ視聴者より中高年層の割合が少なく、怒りをあおる形で報じることも可能。多数のコメントが書き込まれ、SNSで拡散されることを狙った衝撃的なタイトルや見出しの記事が散見されます。

両者の共通点は、多くの交通事故がある中、狙いすますように高齢ドライバーのそれをピックアップしていること。さらに「ほどよい対岸の火事」として見やすいコンテンツにとどめているところも似ていると言っていいでしょう。

特に最近は「瞬発的な怒りを誘うことで数字を狙う」「社会的な問題提起や改善に向けた提示は少なくビジネスの意味合いが濃い」というニュアンスがあり、メディアの罪深さを感じさせられます。

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