「最近、90代ドライバーの事故多くない?」「さっさと免許を返納しろ!」《“超高齢”ドライバーの事故》は本当に増えているのか?
ではテレビやネットにはどんな報道スタンスが求められるのか。
どちらも“メディア報道”本来の役割を考えると、事故の状況を報じ、高齢ドライバーの人柄を周辺取材するだけでなく、たとえ数字につながりづらくても、具体的な改善案や身近なチェックリストなども報じるべきでしょう。
たとえば、改善案は「自主返納促進のさまざまな取り組み」「免許更新の検査強化、更新期間の短縮化などの実現性」「見やすい道路標識などの再整備」「公的機関が進めている事故予防の取り組み」「自動車メーカーの技術開発によるサポートの現状」など。
チェックリストは「ブレーキのタイミングが遅くなっていないか」「アクセルとブレーキの踏み違い未遂はないか」「高齢ドライバーに話しかけたとき返事の反応は遅くないか」「右左折や合流などの際、適切なタイミングで目視しているか」「駐車場にこれまで通りまっすぐ止められているか」などがあげられますが、これらをもっと報じてもよさそうです。
「免許を返納した人」への取材
また、メディアにもう1つ扱ってほしいのは、免許返納した人を取材した映像や記事、あるいは、これから返納しようとしている人のドキュメント。
実際に返納してどうだったのか、返納する前の不安は解消されたのか、意外と問題なかったのならなぜなのか、逆にメリットはあったのかなども扱うことで、社会公益性が高くなるとともに、バランスの取れたフェアな報道になるでしょう。
その点、冒頭にあげた「news23」の特集は、一定の社会公益性を感じさせられました。
「実際に人を殺すまで免許を持ち続けるんじゃないかなと思ってます。それじゃ困るんですけどね」と語る息子の声は切実でしたし、その気持ちを理解しながらも「事故をしない自信はある」「危ない経験をするまでは返納は考えづらい」「少なくとも次の更新までは運転する」という父の姿はリアルだったのです。
さらに子どもから「個人の説得では限界がある」という核心を突くようなコメントを引き出せていただけに、前述した改善案やチェックリストなどにも踏み込めたら、なおよかったのではないでしょうか。
「家の近くに公共交通機関が少なく、何十年も車で移動し続けてきた」という高齢ドライバーの説得は容易ではなく、高齢化社会の進行でこの悩みは増していく可能性が高いだけに、今後はメディア側の報じるスタンスがより問われていくでしょう。
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