「最近、90代ドライバーの事故多くない?」「さっさと免許を返納しろ!」《“超高齢”ドライバーの事故》は本当に増えているのか?
また、このところ高齢ドライバーの事故が報じられるたびにネット上で声があがるのは、「高齢化社会の進行に制度や技術が追いついていない」という環境面の危うさ。
なかでも「もっと行政のサポートが必要」「高齢ドライバーの車に安全装置の義務化を」「運転免許取得の下限があるのに上限がないのはおかしい」などの意見が散見されます。
これらは「高齢ドライバーによる事故が多い」という前提で報じられていますが、実際のところどうなのか。いくつかのデータを見ていきましょう。
高齢ドライバーの事故は数自体は減っている
警察庁交通局交通企画課「交通事故統計月報(令和7年5月末)」の「一般原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別死亡事故件数の推移」によると、高齢者の死亡事故件数は2020年代に入ってからほぼ横ばい。
65歳以上の死亡事故は、2023年5月が297件、2024年5月が277件、2025年5月が281件であり、2010年代後半は300~378件だっただけに、2020年代に入って減少した水準を保っています。
また、80歳以上に限定すると、2023年5月が86件、2024年5月が87件、2025年5月が78件と、むしろ今年は減っていました。
さらに92歳男性の事故があった福岡では、「2025年5月末までに県内で発生した交通事故のうち3割以上にあたる2523件が高齢者によるもの」という県警のデータが報じられました。これを多いとみるか、少ないとみるかは意見が分かれるところでしょう。
別の都道府県では、神奈川県で昨年発生した交通事故のうち65歳以上の運転が原因となった事故は23.5%で、過去10年間の最多だったことが報じられました。交通事故の発生件数が減少傾向にある中、高齢ドライバーの占める割合が少しずつ増えてきているようです。
その他のデータを見ても、全体の事故件数は2010年代よりも減り、高齢ドライバーの事故も同様に減ってはいるものの、その割合は高齢化の進行もあってジワジワと増加。
しかも最も事故件数が多い10代後半や20代前半と比べて死亡事故が多いため、「高齢ドライバーの事故が増えている」という印象を受けやすいのではないでしょうか。
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