「最強の対外不介入主義者」のはずが中東で揺れるトランプ大統領、「イラン攻撃の誘惑」があまりに危険すぎる理由

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トランプ大統領は16日の日程は最後まで付き合ったが、夜にはカナダを去ってワシントンに舞い戻った。ホワイトハウスのシチュエーションルームで事態を分析し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と電話会談する。心はすでに米軍によるイラン攻撃の検討に傾いている。

イスラエル軍は、ナタンツの核濃縮施設を破壊することに成功した。地下部分は残っているものの、IAEAによれば深刻な損傷を与えたらしい。問題は地中深くに埋設されているフォルドゥの核施設である。ここを無力化しないと、「イランの核開発」を終わらせたことにならない。それはイスラエルが保有する武器では不可能である。

「抑止力回復」か、「体制転換までは踏みこむな」か

ただし、米軍が持つ地中貫通弾「バンカーバスター」と、それを運ぶことができるB2戦略爆撃機を投入すれば、フォルドゥ地下の核施設を破壊できるかもしれない。そしてイランの核開発を完全に止めることができれば、これは歴代の政権が成し遂げられなかった快挙(レガシー)ということになる。

トランプ大統領がイラン攻撃の誘惑に駆られるのは、イスラエルの勝ちっぷりがあまりにも際立っているので、「これなら米軍が参戦しても大丈夫」という思惑もあるのだろう。中東には米軍基地がたくさんあるので、そちらでイランの報復攻撃を受ける恐れもあるのだが、これだけ形勢が大差であればリスクは小さいのではないか。だったらここは、「バスに乗り遅れるな」という打算も成り立つところである。

国内メディアの反応を概観すると、「イラン討つべし!」と威勢がいいのは保守派のウォール・ストリート・ジャーナル紙である。6月18日の社説”Iran Is Trump’s Deterrence Moment”(トランプ氏はイラン問題で抑止力を取り戻すべき)では、「これはアメリカに敵対する勢力に攻撃を仕掛ける好機である。バイデン前大統領が2021年にアフガン撤退で残した負の遺産を一掃し、米軍は抑止力を取り戻せ」と言う。昔懐かしいネオコン的な論調だ。

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