イラン側は直ちに報復攻撃に出た。しかしミサイルやドローンといった「飛び道具主体」の攻撃であり、イスラエル側に一定の被害は出ているものの、その多くはご自慢の防空システム「アイアンドーム」によって撃ち落されている。「タマ」を打ち尽くしてしまったら、そこで手詰まりになるだろう。逆にイラン側は、防空システムを破壊されて制空権を奪われており、イスラエル軍は好きなところを攻撃できるという状態だ。
「自分から外交で解決」と乗り出したトランプ大統領
問題はアメリカの出方である。これだけの攻撃をイスラエルは単独で実施した。ドナルド・トランプ大統領は、記者に聞かれて「知っていた」と答えているので、「イランをやりますよ」という事前通告はあったのだろう(トランプ大統領が見栄を張っている可能性もある)。ただしイスラエル側としては、「アメリカに相談しても、どうせ反対されるだけ」と最初から見切っていた様子。トランプ大統領としては、これは面白いはずがない。
これに先立ち、トランプ大統領はイランとの核協議を再開していた。かつてオバマ政権は2015年に、JCPOAというイランとの多国間の核合意をまとめあげたのだが、トランプ大統領は第1期政権の2018年に離脱してしまった。そのうえで原油輸出や金融取引をめぐる厳しい経済制裁に打って出て、イラン側は完全に態度を硬化させてしまった。
しかるに第2期政権では、トランプ大統領は自分から外交で解決を、と乗り出したのだ。せっかく和平を仲介してやっているのに、ウクライナ戦争もガザ紛争も止められない。だったらイランはどうだろう、と思ったのかもしれない。しかるにネタニヤフ首相は、「そんな手ぬるいことじゃダメです」と強硬手段に訴えたわけである。
ちょうどカナダのアルバータ州カナナスキスでは、6月15日夜からG7サミットが始まるところであった。
しかしトランプ大統領は心ここに在らず。とてもじゃないが、世界経済や貿易問題を論じているような心境ではない。石破茂首相との日米首脳会談においても、関税交渉は前進できなかった。これはまあ、致し方ないだろう。韓国のイ・ジェミョン大統領やインドのナレンドラ・モディ首相のように、「トランプ大統領と関税で直談判」するつもりでカナダに乗り込んできたのに、「会えなかった」首脳もいたくらいなのだ。
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