世界で増える「日本ファン」。日本大好きアメリカ人エコノミストが"アメリカ外し"の無秩序な世界でも日本が"意外に繁栄できる"と考える訳

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スミス:言わせてもらえれば、19世紀後半から20世紀初頭も、実は今と同じ“無秩序な世界”だった。1870年当時、世界には覇権国なんていなかった。大英帝国は存在していたが、それは“帝国”であって、“世界の警察”ではなかった。 第2次世界大戦後80年にわたるアメリカのような覇権国なんてなかった。

つまり、ほとんどの世界史は“無秩序の時代”だったと言える。そしてその無秩序な時代にも、日本は実はちゃんとやっていた。戦前・軍国主義・中国侵略といった暗い記憶に目が行きがちだが、1920年代までの日本は、制度も経済もかなり近代化されていて、前向きな成果も多かった。当時の日本は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、ロシア……さまざまな国から必要な制度や技術を学んで、柔軟に取り入れていた。

私はこう思う。無秩序な世界は、むしろ「規模が小さくて安定した政府を持つ国」に有利なんじゃないのかと。覇権国が存在する世界は、中国やアメリカ、そしてインドのような“大国”に有利に働くが、無秩序な世界になったときには、目的を持って機動的に動ける小さな国のほうがむしろ繁栄しやすくなる。日本はそのポジションにある。

世界はむしろ「通常状態」に戻った?

そもそもこの無秩序への移行は中国の台頭によって起きるはずだった。トランプはその移行を早めているのに過ぎない。「アメリカの覇権の時代」はもう10年前に終わっている。

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第2次世界大戦後にアメリカが世界の安定を支えた80年間はとても価値があったと思う。だが、そういう時代は特別で、一時的なバブルのようなものだ。しばらくは豊かになるが、やがては現実の"通常状態"に戻る。そしてそれが今の時代だ。世界はあるべき本来の姿に戻りつつある、ということだ。

カッツ:だが、その頃と今では世界の仕組みが変わっている。2016年ごろ、『アメリカは"穏やかな覇権国"である能力を失いつつある』と、『フォーリン・アフェアズ』誌で読んだのを思い出す。その通りになったと思うし、これはアメリカにとっても損失だが、世界全体にとっても損失だ。私自身は無秩序の世界は、経済的にも地政学的にも安定しないと思っている。

スミス:なるほど。でもそれは多分、私があなたより若いからそう考えているのかも……。

カッツ:……そのうち、君も大人になったら、私に近い考え方になると思うが……。

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スミス:あなたは、冒頭の例にあった工場の元社長のように「変化によって失うもの」という観点で考えているのに対して、私は43歳の新社長のように「今変化を起こさなければ失うもの」あるいは、「変化を起こせば得られるもの」を考えているのかもしれないね。

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対談2回目:日本、ついに「1人当たり」でポーランドにも抜かれる!?日本大好きエコノミストが語る"日本がこれから生き残るため"の《たった1つの方法》

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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