鉄道?それともバス?「富士トラム」詳細明らかに 長所多い「夢の乗り物」だが今は「絵に描いた餅」

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今回の公表後、検討会の委員を務める流通経済大学の板谷和也教授から以下のコメントを得ることができた。少し長いが重要な指摘なので紹介する。

「マイカー規制を行う場合、富士山登山者の総量規制を行わないと、バスが列をなしてスバルラインを登っていくことになりかねないので、環境に優しい大量交通機関を整備し、かつ、1日の最大登山者数を絞ることが不可欠と考える。そのために必要な条件として、今回の技術検討がある、と私は考えている」

「県は道路を活用した大量交通機関の運行可能性について細部を詰めて検討を行っており、技術的に運行が不可能ではないということが明確になったことは重要である」

「ただし、新技術にこだわる必要があるかどうかは疑問が残る。水素エンジンにしても蓄電池にしても、厳しい条件下でどのくらい使えるか未知数と思う。メンテナンスのための費用が高額になると、運行が短期で終わってしまう可能性もある。実用化ハードルの低い国内メーカーの技術を使うほうがよいかもしれない」

「整備・運営のための費用を富士山登山者に負担してもらうためには富士山登山者全員を富士トラムに乗せ、さらに総量の制限を行うくらいの厳しい規制が必要になる。車両や走行技術等の検討に加え、今後は運賃設定や課税手法といった、運行の前提条件についての検討が重要になってくるのではないか」

「実物」展示で議論加速も

県は今後の進め方について、富士トラムの採算性や実施計画などの調査を行うとともに、住民の意見も聞いていきたいとしている。長崎知事は、海外から実物の車両を持ってきてデモ走行させたいという意向を持っていると聞く。確かに日本には存在しない乗り物だけに、実物を見るのが手っ取り早いという考えは成り立つ。

ただ、和泉統括官はこの件について「まだ予算化はされていない」と話す。確かに日本に持ち込むとしてら輸送費だけでも結構な費用になるのは間違いない。そもそも、県内のどこでデモ走行するかも問題だ。

だが、走行できないモックアップでもいいから“実物”を見ることができれば、富士トラムのイメージが明確になる。それによって、手っ取り早く海外から車両を調達するのか、時間をかけて国産車両を開発するのか、それとも課題はあってもすぐに実現できるEVバスがいいのかという議論が加速するのであれば悪い話ではない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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